【銀魂】可もなく不可もなく

生産性の有無 ページ8

休日。やってきたのは万事屋である。
ーーやってきた、とはいっても、まだインターホンすら押せず、扉の前で右往左往しているだけなのであるが。





「・・どうしよう、悲鳴でもあげられたら」


今日ここを訪ね、なおかつここまで挙動不審な理由というのは、ーー昨日、私が定食屋でおかした失態に関係している。


絶対引かれた。問答無用でドン引かれた。
だって、いつも帰り際一声かけてくれるはずの彼が
何も言わずいつのまにやら消えていたのだ。

後には、空になった丼がポツンと置かれていて。




・・昨日の件は間違いなく、私が悪いのだ。
じゃがいものことであれだけキレる女って。
私が男なら絶対やだもん。




(ーーどうも熱くなっちゃうなぁ)



昔っからキレると周りが見えなくなるのだ。

20歳を超えて、そろそろ大丈夫だろうと思った
矢先にこれだ。もう何も信じられない。



そうして、今日は謝罪に来たのだけれど、
ビビって追い返されることに恐怖を感じ、
いまだグダグダしてるというわけだ。

お礼の品として持ってきたせんべいが収まる
紙袋をぎゅっと握り締める。・・気合い、根性。
悪いことをしたら謝る。これ、人生の基本。





「・・よし、」



いざ出陣とインターホンに指を置いたとき。
私がこれまで渋りに渋って開けることに苦戦していたその引き戸が、ーーーガラリ、開かれた。





「「あ、」」



うまい具合に重なった声。

出てきたのは銀髪のその人本人で。
私としても、まさかの事態にぽかんと口を開け、
目の前の銀さんに実感が湧かなかった。ーーので、






「・・は？A？何してんだよこんなとこで」

「あ、ども。こんにちは」



突如話しかけられ、普通に挨拶を返してしまう。
あぁ、意外と冷静なのか自分は。かくゆう銀さんも
怪訝そうな顔はしながらも、恐怖に染まることは
なかったのである。


肌寒い外気に触れていたからか、今になって
鼻水が垂れてきた。思わずズズ、とすすれば。




「依頼か？」

「いや、えっとですね」


「・・・・まあいいや。とりあえず入れよ。
神楽達いねーけど」

「え」

「ガキってのァ元気だよな」



このクソ寒い中缶蹴りだとよ、と
肩をすくめる彼は、白い息を吐き出しながら、

家の中へと、私を促した。





「缶蹴ったって何もでてこねェってのに。
生産性がねーんだよあいつら」

「銀さんに生産性があるとも思えないんですが」

「んだと」





ーーーって、謝りにきたのに貶してしまった！

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