【銀魂】可もなく不可もなく

一枚上手 ページ37

ー銀時サイドー




(ーーったく、突然変なこと言いやがって)



もちろん、Aのことである。
何事もなかったかのように、手を振っていたあいつの呑気な顔が眼に浮かぶ。

あの様子では、俺がアタフタしていたことには
毛ほども気づいていないんだろう。



今も暇な店の中で、頬杖をつきながらぼんやりして
いるであろう女の姿が浮かび、ガキどもに気づかれぬようため息をつく。







(・・この俺があんな小娘に流されるたァ、)



何たる失態かと肩を落とす。
いや、何も気づかねー奴は強いというが、
あいつは、より底なしというか。

普通の奴だとばかり思って油断していた隙を
つかれちまったというか。まあとどのつまり、
これまで知らんぷりをしていたのは全部パー。

ーーー俺の隙間に完全に入り込んで来たってことだ






「銀ちゃん？何ぼーっとしてるアルカ」

「疲れてるんじゃないですか？・・あんなに
店で騒ぐからですよ」

「あれくらいで疲れてちゃ中折れ確実ネ。
やっぱりもう歳アルナ」

「何言ってんの神楽ちゃん」





新八神楽の棘を含んだ物言いにすら、
今は言い返す気は起きない。確かに疲れてるのかも
知らないと思う。そうだ疲れてんだ。


季節柄もなく暖かい季候。
近頃は気分屋なようで、今日のように機嫌のいい
晴天を浮かべる時もあれば、雪を降らせる時もある

まったく、寒暖差が激しいと面倒臭ェ。





「それにしても、実際のところはどうなんですか」

「あ？」

「Aさんのことですよ。この前だって、
個人指名で仕事だったんでしょ？」

「何突然興味持ち出してんだよ気持ち悪ィよ」

「別にいいでしょ。いい歳したうちのニート社長の
将来を心配したって」

「誰がニートだ！」



心底余計なお世話だ。
俺の将来など俺が決まる。こんな青いペーパーに
気にかけられるほど、俺はまだ腐っちゃいない。





(・・まあでも、)



懐にとびこまれた以上は、どう対処していくか
自分の中でも整理をつけるべきだ。

ーーとか何とか格好はつけてみるものの、これまで
から察するに、あの女のほうが一枚上手である
可能性が高い。

さりげなく→←不器用な優しさ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す