優しい男 ページ32
ー土方サイドー
柔らかな感触が、ゆっくり離れていった。
同時に、頬に感じていた体温も。
ふわりと香るそいつの匂いに、アルコールの匂いが
かすかに混ざる。ほんのりと色づいた女の頬は、
ーー果たして、酒のせいか、別の何かか。
(・・いや、俺もどうかしてるな)
珍しく酔いのまわりが早いらしい。
無責任にも、そいつに説教じみたものを垂れた。
Aにとっては、深く根付いて逃れられぬ世界。
それを全て取っ払うなんざ、簡単なことじゃない。
"ーーー頼むよ"
そんなことを垂れた俺が、あいつが望むことを
断れるはずがない。いつも自分を押し込めるそいつの願うことを_____。
たった一言で、俺を黙らせたのだ。
(・・利口な女だ)
現役警察を手玉に取るたァ。
とんだ小悪魔だ。
ーーーそうしてまた、罪悪感に満ちた顔をする。
「・・おかしいね」
「・・何が」
「キスなんてこれまで何度もしてきたのに、こんなにも満ち足りた気分になったのは、初めてだよ」
あぁ、違う。
こいつはまだ酔ってない。
赤くなった頬も、別にアルコールのせいじゃない。
「お兄さん」
嬉しさと、罪悪感と、後悔。
ーーー複雑な表情を切なげに浮かべたAは、
また、あの作り笑みを見せたのだ。
「お兄さんは、優しいね」
優しいわけ、あるか。
「ごめんね」
こいつが今謝っているのは、俺のせいだ。
「・・A、」
「やだね、酔いが回っちまったみたいだよ」
顔が火照っていけない、と。照れ笑いをしながら
両手で顔を覆う。どんな声をかけるでもなく、
その様子を呆然と見ていた俺に、Aは、
再び切なげに笑いかけた。
「ーーーお兄さんは、優しいよ」
本当に俺が優しいならば、
こいつからのキスを、甘んじて受けるなんてことは
しなかっただろう。
・・受ければ、こうしてこいつがまた罪悪感に
埋もれてしまうことくれェ、容易に想像がついた。
その唇を拒絶できなかった。
手前ェ自身をはっきりさせないまま、
ただ悪戯にこの部屋に通い、女を惑わせた。
「・・私は、平気だから」
挙句、こうして気を遣わせる。
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シュシュ☆☆(プロフ) - ややさん» ありがとうございます!嬉しいですっ!!読んでくださり、感激でいっぱいでございます!がんばります! (2018年2月1日 20時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
やや(プロフ) - 凄くいい話ですね尊敬しましたこれからも更新頑張って下さいね!!! (2018年2月1日 19時) (レス) id: 551e634984 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます!土方さんは、実は優しいんじゃないかな?というのが私の妄想です笑。きっとピンチに助けに来てくれるはずです!あと少し、お付き合いいただけると嬉しいです! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 愛音さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!ちょっと土方さんがヘタレになってしまいましたが…最後はきっとビシッと決めてくれるはず…です!頑張ります! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!何とか一巻完結ということで、どうなるのやら私もわかりませんが、頑張って収めたいと思います!どうぞ楽しんでいただけると光栄です! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月4日 1時