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約束のそれ ページ28

一週間ぶりに、彼は部屋の敷居をまたいだ。








「ーーいらっしゃい、お兄さん」




その人は、短く「ああ」と返事をして、
いつものように刀を下ろし、襖付近に座った。

その顔を遠目に覗き込めば、あれ、と。






「随分と隈がひどいね」

「ここんとこ、徹夜が続いてな」


「・・それなら、こんなところに来てないで
寝たらよかったのに。気でも遣ってくれたのかい」


「違ェよ。俺がここに来たいと思ったから来た。
それだけだ」



「ーー、全く恐ろしい人だよ」

「あ?」




無自覚なのだろうか。
そんな殺し文句投げかけてくるなんて。

それとも、何の意味もないこの言葉に、
私が勝手に過剰反応してしまっただけなのだろうか


眠くても、ここに顔を出してくれるということ自体
とても嬉しくて。一気に顔が熱くなった。

緩む頬を引き締めようと必死だった私は、
ふと、部屋の端っこを目でとらえた。






「ああそうだ。約束通り、酒を用意しといたんだ。
お口に合うかわからないけど」




隅に置かれた瓶は、他の客に見つからないように
布切れをかぶせて隠してあった。今日、この人が
来るまで無事ここにあったことに、安堵する。


小さなお猪口を一つ、瓶と並べた。

その人は、微動だにせず私の様子を眺めており。
ふと顔を上げ微笑めば、彼も少し目元が緩んだ
気がした。







「ーーーこっち、おいでよ」



手招きすれば、案外すんなりと腰を上げた。

私のすぐそばに座った彼。・・その存在がいっそう
強く感じられる。たったそれだけで、私の胸は、
張り裂けそうなほどに脈打った。






「・・あんたが選んだのか、この酒」

「そうだよ。こう見えて私、酒豪だからね。
種類には詳しいのさ」



「そりゃ、確かに意外だな」

「だろ?」




こうして笑い合う時間が、私にとってどれだけ幸せなことなのか。罪深いこの男は、きっとまったく
気づいていないのだろう。




ーーーポン、と軽く音を立て、酒瓶の蓋が空いた。

ほんのりと、アルコールの匂いが広がった。
瓶の中で揺れる透明の液体が、ランプの光を受け
鈍い光を反射させる。




「じゃあお兄さん、注ぐよ」

「・・あぁ」




お兄さんの大きな手に、小さなお猪口が
乗せられた。ひどく不釣り合いなそれに、
少し笑ってしまいながら、重量のある酒瓶を
持ち上げた。

その意志→←迷っている



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎   
作品ジャンル:アニメ
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シュシュ☆☆(プロフ) - ややさん» ありがとうございます!嬉しいですっ!!読んでくださり、感激でいっぱいでございます!がんばります! (2018年2月1日 20時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
やや(プロフ) - 凄くいい話ですね尊敬しましたこれからも更新頑張って下さいね!!! (2018年2月1日 19時) (レス) id: 551e634984 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます!土方さんは、実は優しいんじゃないかな?というのが私の妄想です笑。きっとピンチに助けに来てくれるはずです!あと少し、お付き合いいただけると嬉しいです! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 愛音さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!ちょっと土方さんがヘタレになってしまいましたが…最後はきっとビシッと決めてくれるはず…です!頑張ります! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!何とか一巻完結ということで、どうなるのやら私もわかりませんが、頑張って収めたいと思います!どうぞ楽しんでいただけると光栄です! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月4日 1時

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