曲者 ページ3
ー土方サイドー
「ーーーどうしたんだい?こっちへおいでよ」
「・・あんたは」
「ん?あぁ、なんだ。指名じゃないのね_____ 」
"A"
そいつ自身の名前だろう。ーーA。
たった数文字のそれも、その形のいい口から紡がれ
ることで、艶美な何かを漂わせる。
「お客さんは?」
「あ?」
「名前だよ」
「・・・伏せさせてくれ」
「つれないね」
Aは、クスリと笑った。
動作の一つ一つが洗練されていた。
ーーーさすがは"遊郭"の女、と言うべきか。
「まあいいさ。ここに来る連中は秘め事が多い。
それに名前なんて、機械に割り当てられる製造番号と同じようなものだからね」
「随分な極論だな」
「そりゃあんた、・・こんなところにずっといれば
考えもぶっ飛んだものになるってもんでしょ」
ふぅ、と女がふかした紫煙が、部屋の一角を
白く染めていった。高価そうなそのキセルは、
客からの貢物だろうか。
「それより、ーー座ったら?お兄さん、ずっと
入り口に突っ立ってる」
「・・・いや、ここでいい」
何だろう。近づいてしまえば、どうにかなっちまい
そうだと思った。この女の持つ何か___、例えば、
女の醸し出す妖艶さや、洗練された動作。
そんな一つ一つが、見る者を惹きつける。
ーーきっと、取り込まれてしまう。そう思えた。
「・・お兄さん、その若さでどんな裏稼業に手を
出したのさ。薬?それとも、ーー武器商人?」
俺の腰元を見やったそいつは、そんな発想に
思い至ったようだった。
腰から刀を外し、畳の上にそっと置く。
警戒されてはまずいと思ったからだ。
そうして、ーー俺も扉付近に腰を下ろした。
「残念ながら、どれもハズレだな」
「あら」
クスクスと、可笑しそうに笑う。
しゃべっている間も、Aは完璧なまでの綺麗な
作り笑いを絶やさなかったが、ーーやはり、今のように心底からの笑みの方が、この女には似合う。
「ーーーで、お兄さんは私に何が聞きたいんだい」
「ッ、」
「あんたは、私と遊びにきたわけじゃなさそうだ」
ーーーバレた・・?
鋭い視線。鋭い声色。・・・あぁ、まずい。
この女は、思いの外、曲者だ。
170人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シュシュ☆☆(プロフ) - ややさん» ありがとうございます!嬉しいですっ!!読んでくださり、感激でいっぱいでございます!がんばります! (2018年2月1日 20時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
やや(プロフ) - 凄くいい話ですね尊敬しましたこれからも更新頑張って下さいね!!! (2018年2月1日 19時) (レス) id: 551e634984 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます!土方さんは、実は優しいんじゃないかな?というのが私の妄想です笑。きっとピンチに助けに来てくれるはずです!あと少し、お付き合いいただけると嬉しいです! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 愛音さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!ちょっと土方さんがヘタレになってしまいましたが…最後はきっとビシッと決めてくれるはず…です!頑張ります! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!何とか一巻完結ということで、どうなるのやら私もわかりませんが、頑張って収めたいと思います!どうぞ楽しんでいただけると光栄です! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月4日 1時