【銀魂】闇に酔う悪魔

キセル ページ40

部屋の窓から見える空からは、ちらほらと雪が降り始めていた。そんな様子をぼんやりと眺めながら吐き出した紫煙。

目の前を白く染め、あっけなく消えるそれは、
別段美味しいとは感じない。


ーーー少し前、常連客からもらったキセル。

随分高価そうなもので、
放りっぱなしも勿体無いだろうっていう理由から
なんとなく口にしているだけ。


常連客は、私が使っているところをみて
満足げな笑みを浮かべていた。




今だって、そんなに好きってわけじゃないのに、
気がついたらキセルを手にとっている。

ひとつ煙をふかせば、何となく落ち着くのだ。

その苦味や煙たさが、私の中でモヤモヤ渦を
巻く"何か"をごまかしてくれる。今の生活とか、
裏の世界のこととか。そういう目を背けたくなる
ことから、逃がしてくれる。

私がこうして今の暮らしを続けられる理由の一端は
案外、タバコの気休めにあるのかもしれない。




苦笑まじりに再度煙を吐き出したところで、
ーーー静かに襖が開いた。







「・・いらっしゃい、待ってたよ」




私を見つめる複雑な表情は相変わらずで。
けれどいつもと違うのは、何も言わずとも、
黙って私のそばに腰掛けたことだった。







「ーー聞きてェことがある」





お兄さんの肩が、雪のせいで濡れていた。
そんなどうでもいいことに意識を向けながら、
来て早々彼のいう"聞きたいこと"とやらに
耳をすます。







「以前あんたに、大友総二郎について聞いたことが
あったろ」


「・・あぁ、懐かしいね」


「その大友と取引していた武器商人について、
何か知らねーか」




武器商人。そんなもの、この世界には五万といる。
どれが大友と付き合いが深かったかなんて、
一介の遊女が知るはずもない。

力になれそうにないと、私は首を横に振った。





「・・そうか」

「一体全体、今日はどうしたってんだい？
突然真面目くさった話なんざ」



酒に伸ばしかけていた手を止めた。
彼の目の周辺を黒く塗りつぶす隈は、
どうにも以前より濃くなっているように思える。

先日は非番だと言っていたが、
ちゃんと休んでいないのだろうか。





「ちと手を焼いてるもんでな。・・まあここにゃ
情報求めて通ってんだ。問題ねーだろ」


「まあ、そうだね」




建前だと言ったのはお兄さん自身だってのに。
ちゃっかり使ってんじゃないか。

ヘドが出る→←許されない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す