【銀魂】闇に酔う悪魔

嘘ベタ ページ18

ー土方サイドー





決行日。条件は上々。
いいコンディションで迎えた予定時刻。

一番隊を主体に、アジトへと乗り込んだのが、
ちょうど1時間ほど前か。


静けさと、安堵と、慌ただしさが混在するこの場で
俺は新しいタバコに火をつけた。





(・・綺麗な仕事たァ、言えねーよな)





今は腰元でおとなしくしている刀も、つい先刻まで
肉を断ち、血を吸っていた。頬を拭えば返り血の赤

すでに乾きかけたそれは、少し黒くなっていた。






「ーーー土方さん」

「あ？」

「あっちの処理は終わりやした。そろそろ帰って
寝たいんですがいいですか」

「いいわけねェだろ。寝るなら一生寝てろ」





総悟もまた、ーーいや、俺よりもひどく返り血を
浴びて、体のところどころを赤く染めていた。

寝たい寝たいといいながら、その目は瞳孔を開き
爛々と鋭い光を放っており。




(・・こいつァいつもそうだ)



俺もその感覚はわからなくねーが、
戦場に出た後、興奮状態がしばらく続く。






「これで一息つけますねィ」

「んなもん、つく暇ねェよ。毎日飽きず犯罪に手を
染める奴らがいるからな」


「あり？あんたは休みてェんだと」

「は？」




総悟は、考えの読めねェ表情で、処理が進む現場を
眺めていた。





「ーーー行きてェんでしょ、"あそこ"に」





やはり、誤魔化せちゃいなかったか。
こいつが俺に気を使うわけもない。
これはもしや、弱みをちらつかされているのか。







「何のことだ」

「近藤さんとは違いますぜ。あんな隙だらけの嘘で
騙されるほど、俺ァ単純じゃねェ」


「・・詮索は無用だ。もう何もねーよ」

「あんた嘘つくの下手ですよねィ、昔っから」




昔。一体いつのことを言っているのやら。そう内心
とぼけてみても、なんとなく心当たりはあった。





「別にあんたの性事情に興味はねェが、
溜めて仕事に支障きたすくれェなら、
しっかりシッポリやってこいよって話です」

「お前俺のこと何だと思ってんだ」

「ムッツリ」
「オイ」




まあそういうことです、とか何とか。
どういうことだ。





(・・ったく、)




あいつも例に漏れず不器用じゃねーか。

パトカーの赤いランプを眺めながら、
名を呼ばれ面倒臭そうに去っていく総悟の後ろ姿に
少し苦笑がこぼれた。

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