【銀魂】棘に隠れた蕾

思い返してみると ページ33

午後も深くなってきた。気温も先ほどよりは上昇し、過ごしやすい気候。

時折吹く風が冷たいその中を進む。
やはり納得がいってないようだが、私の後ろを
ついてくる坂田銀時は、態度では面倒くさがりながらも、案内係はしっかり勤めていた。



ーーー顔が広いと言われただけのことはある。

至る所で名を呼ばれ、引き止められる。
"銀さん"の愛称で親しまれているらしいその人は、
そのたびに足を止め、対応していた。


やはり、人の雰囲気は、他の街と違う。
無法地帯で危ないところだと、ーー独自の自治すら
成立していると噂される政治家にとっては
悩ましい問題地であるが、そんなにひどいところには感じない。居心地は悪くない。






「何よ、思ったより穏やかね」

「朝っぱらから酔っ払ったヤンキーがやべェこと
しまくってるとでも思ったか？」


「・・・・まあ、印象としてはそれに近いものが
あったかもしれないわね」


「住めば都っつーだろ。確かに野蛮極まりねーが、
楽しくやってんぜ？この街に住んでる奴らは」


「そのようね」




確かに、暗い顔をした人には、あまり出くわさない

自由奔放とは、問題になることはあれど、
心を豊かにするにはいい手段なのかもしれない。


すぅ、と吸い込んだ空気は、どこか江戸の中心とは
違っていて、ーーもちろん、私の住んでいた屋敷の
中とも、全く違うものだった。








「ーーーねぇ、万事屋さん。そろそろ疲れたわ。
少し休みま・・、あれ、」


「どこ見てんだよオジョーサマ。こっち」


「・・あら、」




彼を振り返ったつもりだったが、
おかしなことに、目的の姿は見当たらず。
キョトンとして数秒、その人の言葉で合点がいった

私が顔を向けた方向とは反対側。
呆れ顔の坂田銀時が見えた。・・そんな私の様子に
男は「あ、」と何やら気づいたような声を上げる。

そうして、ニヤつきだしたその顔に、
いい予感など抱けるはずがない。警戒して後ずさった私を、坂田は無礼にも指差した。






「ーーーーいっつもそっちの方向に沖田君が
立ってんだろ」



「え？」




そうして、キョトン、と。
そっちの方向というのは、私が先ほど何気なく
振り向いた方向であり。別に沖田を求めていたと
いうわけではない。ーーが、確かに、






(・・本当だわ)



私が振り向いたのは、左斜め後ろ。
坂田銀時が立っているのは右斜め後ろ。



ーーー思い返してみると、沖田はいつも左側だった

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