悲しみの在処 ページ16
午前、ーーもうすぐ11時を数える時間となった今、私はようやく、外の空気を受けた。
大きく息を吸う。
ここ最近気温が下がり、寒さが目立っていたが、
今日は、太陽がしっかり働いているようだ。
体を包み込む日光は、肌寒い中でも
心地よい暖かさを与えてくれる。
「・・ったく、命が危ねェかもしれねェってのに
お気楽なもんですねィ。人混みの中で護衛する
こっちの身にもなってほしいもんだ」
「そのためのあなたでしょう。
ぜひとも身を呈して守ってちょうだい」
「いざとなったらあんたを盾にしてでも
生き延びてやりまさァ」
「私の話聞いてた?」
時折吹く風が、私たちの髪をさらう。
いよいよ、本格的に冬が到来するのだろう。
こうして、季節を直接しみじみ感じることが
できる機会もこれまで少なかったのだ。今はとても
開放感に浸っている。
人は確かに多いけれど、そんなに気にすることでも
ないのだ。下民とは、弱さ故に群がるのだから。
「ーーー・・なあ、Aサマよ」
沖田の声に、足を止める。
振り向けば、多少の疑問をにじませたその人。
赤い瞳には、しかと私が映っていることだろう。
「何かしら」と返せば。
「あんた、つい先日夫を亡くしたばっかですよね」
「ええそうよ。それが何か」
「いや、最愛の夫を亡くした割にゃやけに元気だと
思いやしてね。それとも、オジョーサマってのは、
いつでも気丈に振る舞わなきゃなんねェのかィ」
そんなことかとため息をつきたい気分だ。
ーーが、以前にも言った通り、この人たちのために
つくため息などないのだ。
「別に、悲しくないわけではないわ。あれでも、
一度は私の隣に夫として座っていた殿方だしね。
・・まあかと言って、悲しみを隠して無理している
というわけでもないわね」
思い浮かぶ顔は、口角の上がったニヤケ顔。
私に対して、ーー妻として愛する女性に向けるような優しいものではなかった。
お金のことと、女のこと。
とにかく、自分が得をすることばかりを考えている
ような、人としては好くことのできない人だった
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シュシュ☆☆(プロフ) - ナナさん» ありがとうございました!日々の箸休めにでもなっていれば嬉しいです!どうぞ、これからもよろしくお願いします! (2017年12月9日 0時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます!キャラが濃い夢主ちゃんを書くのが好きみたいです!笑。頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願い致します! (2017年12月9日 0時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!真選組は四苦八苦しておりますよ!きっと沖田くんならなんとかしてくれます!笑。頑張ります! (2017年12月9日 0時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 由梨さん» いつも読んでくださり、ありがとうございます!最後まで楽しんでいただけるような作品を目指します! (2017年12月9日 0時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!行き当たりばったりな私ですが、どうぞ温かく見守ってくださると幸いです! (2017年12月9日 0時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:
作成日時:2017年11月20日 23時