【銀魂】衝突必須の求愛物語

あっという間に ページ10

小さな部屋が、私にあてがわれた生活拠点。自動扉の後ろに見えた無機質な自室。

ベッドと、小さな本棚、簡易キッチン。
生活感のかけらもないそこに足を踏み入れ、
ふぅ、と息を吐いた。






「ーーーさいっあくだ」



胸糞悪い光景がフラッシュバックする。
私を軽々受け止めた団長の勝ち誇ったような顔

あの時、完全に立場は奴が優位だった。
悔しいムカつくウザい。ありとあらゆる負の
感情が渦巻いて、顔が歪むのがわかる。

腹いせに枕をパンチしてやった。もふっ、と
こもった音を立て、拳が吸い込まれた。






ーーー結局、今日も仕事の間中、奴に付きまとわれ、イライラとストレスをため込む結果と
なった。小皺が増えそうだ。






「・・・ほんっと、不覚だった」




まさか大人しくあの腕に収まってしまうとは。
ーーあの時、少しの恐怖から目を閉じてしまったのが、今回の落ち度だろう。

まだまだだな、私も。






(・・・それに、)





私を包み込む腕が、やけに優しかったこと。
暖かい体温に、安心を促されてしまったことが
余計に私の屈辱を煽るのだ。

はーぁ、と大きなため息をついて、私は後ろに
倒れこむ。ちょうど頭に枕があたり、柔らかな
感覚に包まれた。








「ーーー荒れてるネ。何かあった？」


「・・・・・・・・どこから入った」




一体何なんだろうか、この状況にたいして、
もはや驚かなくなった自分というのは。


寝転んだ私の顔を覗き込むヘラリヅラ。横に
垂れた三つ編みが、私の眼の前で揺れていた。






「お前が気づかなかっただけさ。注意したばかりじゃないか。・・油断しちゃだめだって」

「ッ、不法侵入！」
「おっと、」




天井に突き出した拳は、そいつの髪の毛を
数本かすり、空を切った。




「危ないな。すぐ手が出るなんて物騒だ」

「・・・それはこっちのセリフです。戦闘狂の
子兎が偉そうにいってんなよ」




情けないのはわかってるけれど、
力で敵わないのだから、口で対抗するしか
ないじゃないか。睨みつけて、毒を吐くしか
私にはできないのだ。なんたる無力。


今も例に漏れず、めいいっぱい睨みつければ、

・・次の瞬間、顔の両横に、彼の手が置かれ、あっという間に、ーーベッドと彼に挟まれた







「ーーーッ、なに、して」
「俺はどんなAも好きだケド、」




もっと女の子らしくしてもいいンじゃない？、と。いつもは細められている方が多い、
ギラつく青い瞳が、開かれていた。

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