【銀魂】衝突必須の求愛物語

真実と書いてマジとよむ。 ページ37

「ーーあ、」




大きな背中で揺れる三つ編み。
彼の後姿を見つけ、私はとっさに足を止めた。

大きな廊下で響く足音が一つ止む。自分の意思とは関係なしに、どくどくと鳴り始めた心臓の
音が、ーーこの静かな廊下で目立ちはしないか

そんな杞憂から息を潜めて数秒、角を曲がった
そいつが視界から消えたのを確認し、
どっと息をはいた。







(・・・あれから、)



団長と一悶着あった、あの保管庫の出来事から
私はうまく顔を合わせられない。

こうやって、いつも距離をとって、
小さくなっていくそいつを見送るのだ。



私らしくもない、こんな行動。
ーーけれど、初めての感覚、認めたくない
感覚に、戸惑いと悔しさを隠せない。









「ーーーなぁにやってんだァ？」
「うわ！？」




後ろからかけられた声の主とは、





「副団長・・、」

「簡単にバックとられるんじゃねェ。お前さん
戦場に立ったらすぐくたばっちまいそうだな」


「立つ気はありませんのでご心配なく」



最近この人も、団長の呑気さに毒されて
いやしないか。この船内だって平和というわけではないのだが、油断が生まれてしまう。






「最近、団長と食事の時間ずらしてるって？」

「・・・ずらしてません。たまたま合わないってだけなので」


「そうかい。まぁ、それはいい」




基本、この人は私の話に納得をみせるけど、
その目が話を信じていないことはわかっている

やれやれ、とでも言うように、静かに諭されて
いる気分になってしまう。






「・・で、こっからは、仕事の話なんだが」




私達の足は、特に行き先もなく動き始めた。
音が二つに増え、より大きく船内にこだまする






「第7師団に、内通者がいる可能性がある」


「・・・はぁ？」





前触れも前置きもなかったそれが、告げられて
私には、またこのおっちゃんが笑えないギャグをぶちかましたのかとも思えたのだが、






「・・それ、本当ですか？」

「あぁ、さすがにそんな趣味の悪ィ冗談は
言えねーな」




どうやら、彼としても、ほとほと困り果てて
いるらしかった。私に真実と書いてマジと読む
ことを告げ、肩をすくめていた。






「内通者って、・・どこと通じてるんです？
まさかまだ他にも敵団体がいるってんじゃ
ないでしょうね」


「あのなぁ、複数団体から既にモテモテなのは
Aも知ってんだろ？」


「・・・ハァ」




どれもこれも、団長のせいだ。

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