【銀魂】衝突必須の求愛物語

野生的な ページ14

目の前には、扉がひとつ。
ーーこの奥に、あのバカ団長が、間抜けヅラで眠りこけているんだろう。

まさか、断固近づかまいとしていたところに
こんな形で踏み入ることになろうとは。
しかもモーニングコールだなんて。





・・・あぁもう嫌だ。入りたくない。
ばっくれてやりたい。・・けど、仮にも長で
ある奴が大事な会議をほっぽりだしたとなれば
それは大問題である。覚悟を決めて、
ひとつ深呼吸。


扉を開けるボタンを押せば、ーーウィン、と
聞き慣れた音が響き、扉の奥には、薄暗く質素な部屋が現れた。


ぐるりと見渡せば、団長の姿は
すぐベッドの上に発見できた。

掛け布団すら見当たらず、彼は頭の下に敷いた
腕を枕代わりにし、硬いベッドの上で寝息を 立てている。





(・・さすが、野生的な)




この人はきっと、どこでも寝られるタイプだ。
やれやれ、その鈍感さは羨ましいこと
この上ないなぁ、なんて、ひとしきり嫌味を
心中で述べた後、一歩、二歩と近づいた。


横に無造作に垂れ下がった三つ編みが、
息をするのに合わせ、上下に揺れている。







「ーーー団長、起きてください。もしくは
一生起きあがらないでください」



大きめの声をかければ、小さく身じろぎし、
目が、うっすらと開かれた。しばらくぼーっと
黙っていたかと思えば、パチリ。完全に開いた
それが、私に向けられた。






「・・・・A？」


「おはようございます。会議始まりますよ」

「会議、ーーアァ、忘れてた」



阿伏兎の言ってたやつだネ、と。
上半身を起こし、あくびをしながら頭をかく
子兎は、やけに呑気である。むかつく。






「何？起こしに来てくれたンだ」

「副団長にほぼ脅しのようなお願いを受けたので仕方なく。私の役目は終わりです。では」




無邪気な笑みを向けてくるもんだから、
私は無言で踵を返す。「早く準備してください」とか何とか声をかけながら。

ーーーと、







「待ってヨ」

「・・・触らないでもらえますかね」



その腕が、掴まれた。強制的に足が止まる。
もちろん、その犯人は後ろにいるそいつだ。
眉をしかめ振り向けば、未だベッドであぐらを
かいた団長が、こちらを見あげていた。






「せっかく寝込みを襲いにきてくれたってのに
何もしないのは男としてどーなんだろうって
俺思うンだけど」

「人の話聞いてました？」



誰がこんなまずそうなやつの寝込みを
襲ったりするもんか。

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