【銀魂】ラ ブ コ メ 脳

してやられた ページ38

風鈴の音は、涼しさを運ぶと聞いたことがある。ーー確かに音色自体は、チリンチリンとやけに涼しげに奏でられるわけだが、

それで俺の体温が下がるわけでもない。

風情がねぇだ何だと言われるのがオチだが、
そんなものより金が欲しい。




湯豆腐を始末した後、俺は縁側に腰掛けて
小さく吹く風に乗せ、「あー、」と無意味に
声を発した。






「銀時、こんなとこにいた」

「よー、片付け済んだのか」


「片付けも何もないよ。豆腐だもん」



苦笑交じりに現れたのは先ほどまで、食後の
片付けを手伝っていたはずのAである。

ーーーあぁ、こいつには、風鈴の音色が
似合うかもしれねェな、と。よくわからない
ことを考えながら。




「夏だねぇ」

「・・・だな」




そんな音色に混じって、Aの声が聞こえる

地面に届いてねェそいつの足が、ぷらぷらと揺れるのを横目で眺めながら、ふぅ、と小さく 息を吐き出した。









「ーー銀時」

「あ？・・ーーっぶ、」



「ふふ、ひっかかった」




名前を呼ばれた。いつもの調子で。
だから、そいつの方を振り向いた。・・同時に
頬に何かそっと触れた感覚。




ーーーどうやら、Aの細い指が、俺の頬の 形を変えているようだった。



目の前に現れた悪戯めいた笑みが、
心臓をぎゅっとわしづかむ感覚。






「てめっ、やりやがったな」

「たまにはいいじゃない。いつも銀時が
勝ちっ放しなんだから」



その腕をつかもうとすれば、逃げるように、
即座に頬から指は離れていった。ーーまてよ
俺が、Aに勝ってる？ふざけんな。





(・・・そう"見える"だけだろ)



いつだって俺はこいつに弱くて甘いんだから。






「つかA、やっぱお前、最近おかしくね」

「え？」


「ラブコメ願望爆発してねーか」




先日抱えた疑問の続き。こんなに頻繁に小ネタ
突っ込まれちゃ、何かあったのだと思わざるを得ないわけで。問いただす俺に、Aは
あちゃー、と頭をかいた。





「もうばれちゃったのね、残念」

「あ？」

「イタズラ、みたいなものよ」





へにゃりと歪んだ落っこちそうな赤い頬。

どうやら俺は、・・・ここ最近、Aに
してやられていたらしい。

男の最底辺→←みんなで食事会ー夢主サイドー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す