【銀魂】ラ ブ コ メ 脳

惜しい ページ28

雨だ。夏の雨日は蒸し暑くていけねェ。



窓の外では、バケツをひっくり返したような
豪雨が、道行く人の傘を壊しまくっていた。





「・・ただいまぁ！はー！疲れた！」




玄関から聞こえた声で、立ち上がる。
この雨だ。店なんざ暇で暇で仕方なかった
だろうに、あいつは何に疲れたってんだ。

洗濯したバスタオルが、畳まれずソファに
放ってあった。









「ーーーほらよ」

「わぁあ！ありがとう銀時！」




玄関には、案の定びしょぬれの女。
綺麗に整えてあったはずの髪も今はおとなしく
雫を滴らせている。

持ってきたバスタオルを頭にかぶせてやれば、
頬を紅色に染めて、





「ねえ銀時」

「あ？」
「惜しい！！」

「・・・は？」




玄関の引き戸を挟み、外の雨の音が聞こえる中
凛と響いたAの声。こちらに向けてピンと
伸びたそいつの人差し指に、ただ瞬きを
繰り返していれば。





「ーーこのままグシャグシャァーって拭いてくれたら完璧だったのに！」


「・・・なるほどな」



理想のラブコメ展開まであと一息。
悔しそうにこちらを見上げられ、

ーーー俺は仕方なく、その小さな頭を
タオル越しに包んでやった。


わざとグリグリと乱暴にかきまわしてやれば
Aは案外大人しくされるがままで。
時折タオルの間からのぞく口元は、緩やかに
弧を描き、頬はさらに赤くなっていた。







(・・・チッ、)




ーーーちょっと可愛い・・とか何とか、
そんな感想がよぎり。つい手を止めた俺に、
不思議そうに顔を上げたその女。







「ぎ・・_____、」




俺の名を呼ぼうとしたらしい声は、覗き込むように合わせた唇によって、封じられた。

タオルによって視界を遮られているAの
慌てる様子が、面白いように伝わってきて。


・・そのまま、そいつによって胸板をボコスカと殴られるまで、唇を離さなかった。

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