【銀魂】桜に詠う

仕組み ページ10

「知りたい？私達の仕組み」


「仕組みって、お前ら機械かよ」

「そんなものより便利さ」







再び吹き出した風が、女の髪を乗せる。
花びらが、そっと頬をかすめた。

そいつは、その小さなピンクを摘み上げると、
月光の中に掲げて見せる。









「ーーー前に言ったじゃないか。・・この桜は
"私を村の外に連れ出してくれる"って」


「・・そういや、そんなこと言ってたな」




あの時も、ーーもちろん今も、その言葉の意味は測りかねているが。






「つまりね、この月に照らされている間だけ、
私達はテレポートする」


「・・・ん？」






・・説明を聞いても、やはり意味を測ることは
できそうになかった。

相も変わらず眉間のシワが取れない俺に、
女は、ポンと手を打った。




「ーーあ、テレポートの意味がわからない？」
「ちっげーよ！バカにしてんのか！」


「じゃあ何だい。これ以上ないほどわかりやすく言ってやってんでしょ」

「どこがだ。もっとマシな冗談言えや」




月の出てる間だけ、桜がテレポートする？
突然現れたそんな現実離れした話を、
「へーそうなんだ」で片付けられるほど、
俺は純粋じゃない




こちらの内心に気付いたのか、そいつは苦笑を
漏らし、掲げていた花びらから手を離す。

鮮やかなピンクを纏ったそれは、ひらりと宙で
身を翻しながら、静かに地へと落ちていった。







「・・そりゃまあ、信じられないのは
無理はないだろうけど、事実なんだよ。
他に言いようがない」



「んじゃ何か？お前が昼間ここにいねェって
言ったのは、・・夜しか来られねーからか」


「そういうことになるね」




私も桜も無事な理由がわかったろ？、と笑う。

ーーあぁ、まあ確かに。・・考えてみりゃ
こいつのこれまでの発言や様子は、
おかしなことに、今の話と合致する。






(・・ここが戦場だと知らなかったのも)




そのせいなのだとしたら。







「それ、行き先は指定できねーの？」

「指定できるなら、戦場なんて物騒なところ、
来るわけないだろう？」



目を細めて笑うその声が、やはり透き通っていて、綺麗で。ーー落ち着く。

まるで、戦など全て幻覚か夢だと思えるような
・・いや、あながちそれで間違っちゃいねーか






(・・この桜の周りは、文字通り別世界だっつーことだろ)





先ほどまで疑っていたのが嘘のように、
俺はすんなり、その話に入り込んでいた。

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