不思議な力と桜 ページ5
「お前、こんなとこで何してんだよ」
「こんなとことは失敬な。桜の御前だよ」
腹に巻かれた包帯は、ひどく不恰好だ。
それでも、心なしか痛みは引いた気がした。
女は、俺の隣に腰を下ろした。一瞥した横顔は
やはり、ひどく整っていて。
愛おしげに桜を見上げるその表情に、
惹きつけられる。
「私の故郷では、桜は大切な宝なんだよ」
「桜が、ねェ」
女はふわりと笑う。桜が似合う笑顔だと思った
降り注ぐ花びらの中で、
そいつの顔はよく映える。
「ーーーで、何がどうなって女1人でこんなとこにいんだ？戦場だぞ」
ずっと気になっていた疑問である。
そもそも、なぜこんなところに。
戦の真っ只中。戦士でも、ましてや、卵だとは
言っていたが、医者でもねェ。
女は俺の質問を受け、静かにあたりを見渡した
月光の照らすそこより、ーーはるか向こう
・・数多の肉塊が転がる、死地へ。
「戦場・・、そうか。ここは、戦場か」
「・・・は？」
ぽつり。納得したようにつぶやいた。
悲しみを交えた、小さな声で。
「どうりで、暗く陰気臭いはずだよ」
「お前、何言ってんの？まさかこの状況で
戦争のこと気づいてなかったってのか？
さっきまでドンパチやってたろ」
「・・気づいてなかったというか、」
女はそこで、口をつぐんだ。
穏やかな風が吹く。なびく髪。
それに伴い香る、甘い匂い。
「この桜はね、不思議な力を持ってるんだよ」
「・・力？」
「そ。ーー私を、村の外に連れ出してくれる」
再び紡がれた言葉は、理解不能で。
けれども、俺をからかっているというわけでは
なさそうだった。
「お前は、一体____、」
「ーーそろそろ、夜が明けるよ」
女は立ち上がる。
遠くに見えたのぼりかけの太陽が、そいつの
言葉を証明付ける。
「早く帰らないと、心配するんじゃない？
あんたの、・・戦友？」
「ーーっ、やべ！そうだった」
音沙汰なしに行方をくらませば、死んだと思われるのは目に見えてる。あの悪友共に墓を建てられるなんざ死んでもごめんだ。
「手当て、サンキューな」
「いえいえ」
立ち上がった俺に向けて、女は綺麗に笑った。
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シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます！もったいないお言葉です！最後まで目を通してくださり、ありがとうございました！ (2017年3月27日 18時) (
レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - とても綺麗なお話ですごく好きです！タイトルも素敵で全体的に私的ドストライクでした！これからも頑張ってください！ (2017年3月26日 21時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます！しっとりした恋が書きたくて衝動的に作った作品でした！最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2017年3月2日 0時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 完結おめでとうございます！儚い恋もいずれは、叶うんですね！こんな恋もいいなと思いました。次回作、頑張って下さい！ (2017年3月1日 19時) (レス) id: 1847792d84 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ミイナさん» いつも応援ありがとうございます！辰馬オチ、絶対いつかは書きたい作品です。完成度はわかりませんが、ネタを探してみます！気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (2017年3月1日 11時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シュシュ
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作成日時：2017年2月22日 0時
