【銀魂】晴れのち煙

メンツの原型 ページ44

「・・・・聞いていい？」

「なんだ」




「・・・何してんの」
「それこっちのセリフ」




妙ちゃんの常連客、ーーゴリラ似の男が
来店してから、私は妙ちゃんとともにその席に
移ったのだけれど。・・・おかしなことに、





「・・・トッシーがいる」

「俺だって本意じゃねーよ」




いつも通り、彼の周りは紫煙が固めていた。
白く濁り、消える。その動作を繰り返す。

それを横目に感じながら、「じゃ、どうして」
と質問を繰り返す。





「ーーーあの人ァ、抑制役がいねーと
暴走するんでな」

「ゴリラ？」


「まあ、・・・世間一般的には」




認めんのかゴリラ。
しかも世間内で認めんのか。

遠くでは、素手酒瓶テーブル・・、と
あらゆるジャンルの武器によってタコ殴り
されるゴリラが見えた。





「一応、あれでも俺たちの上司、ーー警察の
トップだ。下手すりゃメンツが潰れる」


「・・もう原型なさそうだよ、そのメンツ」

「言うな」




これまで数度バイトしているが、あの常連客は初めて見たな。・・というか、あれがトッシーの上に立ってるのか。

何やら真選組というところは上下関係が
少し特殊らしい。


ーー結果的に、席に残されたのは私たち二人で





「・・抑制すべきはキャバ嬢の方かも」

「それに関してはこっちの責任外だ」




血液と悲鳴、妙ちゃんの雄叫びが飛び交う店内は、なかなかにカオスである。









(ーーー・・にしても、)




ふと周りをぐるりと一暼。
正直こっちは、そのカオスどころではない。







「・・・モテるんだね」

「は？」
「数多の視線を感じる」





それが、他のキャバ嬢から向けられたものだと
わかる。私に対して攻撃的な目線も感じる。

全く、女とはいよいよ面倒臭い。





「知らん。興味もねェ」
「・・会話は楽しいかもよ。私よりは」




確かにトッシーは顔がいい。
女が群がるのもわからなくはない。

大抵の男は舞い上がってしまうんだろうが、
この人はあろうことか、興味がない、と。
それに嘘偽りがないことも何となくわかった。


しかしまあ、いつもの喫煙所ならまだしも、
こんな晴れやかな男のオアシスで、私なんかと
成り立たない会話を繰り広げるのもどうなのか








「いい。ーーテメェの方が、気が楽だ」



「ッ、・・趣味悪い」

「言ってろ」





タチの悪いことに・・その言葉にも、嘘偽りの
色はなかったのだ。

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