【銀魂】常に10分前行動を心がけるべし

不幸をあざ笑う ページ42

ー沖田サイドー



濡れて頬に張り付く髪を、雑に払う。
体にこびりついていた鉄臭さは、あっけなく
流れ落ちてしまった。

風呂の排水口に吸い込まれていった赤色を
思い出し、一つ息をつく。


・・・やっと、面倒な仕事が一つ片付いた。






そろそろ昼頃ということもあり、廊下を歩いていれば、肌に差す日が暖かい。ーー昨日の血生臭さなど嘘のように、世間様は平和らしい。





「・・・呑気なもんだねィ」



普段気ままに過ごしている自分がいうのも
何だが、もう少し警戒心というものを持ったら
どうか。・・それならば被害者減少。俺たちの
仕事も減るってもんだろうに。




・・・いや、何も全部が全部平和というわけでもないらしい。ーー少なくとも、









「ーーーー見つけたぞ総悟ォォォオオ！！」



この時間マニアには、平和など訪れない。
勝手に1人で、時間と戦ってるような奴なのだ

正面から、切羽詰まった様子で詰め寄ってきた
Aに、相変わらずうるせーな、と
小言を漏らす。







「全く！湯浴びなんて柄じゃないだろーが！
私の予定が狂うんだよバカ者！」


「人生は予定通りに行かねーから面白ェ」
「面白くねーし！」




ゼエハアと荒く息を繰り返すところを見ると、
かなり走り回っていたようだ。





「で、そんなに急いで俺に何の用でィ」

「あぁ、そうだった！ーーハイこれ！」




乱暴に手渡されたのは、一着の羽織。
受け取ったそれは至極見覚えがあった。
俺が以前そいつに貸したものだ。・・そういや、討ち入りが無事に終わるまで預かりてェって話だったか。





「・・討ち入りは、無事に終わったからね」

「ま、お前ェが無事だったかってのァ
甚だ疑問だがねィ」

「なっ、人の不幸をあざ笑いやがって！！」




俺が助けに入らなければ、今頃こいつの立てた
作戦も、ついでにこいつの命もなかっただろう





「つまり俺ァテメェにとっちゃ命の恩人、
合わせて作戦の恩人でィ。・・それ相応の礼を
してもらわにゃならねーな？」


「ッ、・・バカじゃないの！？」





口角を薄くあげる。この際だ。何だかんだ
言いくるめて奢らせてしまおう、と。
そんな願望とともにそいつに視線を落とせば、

ーーなぜか目が合うことはなく。・・いや、






(・・・・逸らされた、)








一体、どういうことか。

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