二つの証 ページ9
残りの団子は、一気に男の口に入り、
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「んじゃ、俺ァそろそろ行くぜ」
「…勝手にいけば?」
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正直言うと、いつ抜け出そうかと思っている
・・・店主には申し訳ないけれど。
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「あ、そうそうこれ」
「…なに?これ」
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渡された紙袋の中には
私が昨晩着用していた着物
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「綺麗にすんの大変だったんだぞ?
クリーニング代払ってほしいくれェだ。」
「……なんで、こんな」
捨てればよかったのに、と抗議すれば
.
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「・・・綺麗な着物だったしな。」
「綺麗なんかじゃないわよ。
・・・すっかり血で汚してしまった」
.
真っ白な中に花が咲く、綺麗な着物…
それに赤い血を散らす罪悪感
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罪の、証
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「……やっぱお前は、本物の外道にゃ
なれねーよ」
「え?」
小さくつぶやかれた言葉は私には聞こえず……
そこで私も、思い出したことを口にした
.
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「・・・あの、私の刀、は?」
「あんなの、テメェみてェなガキが
持ってちゃいけねーよ?
それこそ、普通に暮らすならな
それとも、大事なものなのか?」
.
.
・・・ここで、親の形見、とでも言っておけば
素直に刀は私の手に戻ったのかもしれない。
そんな考えだって浮かんでいたのに。
.
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「……別に、そういうわけじゃないわ」
「んじゃ、いいだろ」
.
.
逃げる、つもりだったのに。
刀がなきゃ、無理じゃん…
.
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これは多分、口先だけの私が
.
・・・本当は"普通"を
喉から手が出るほど欲しているという
何よりの、証拠
.
・・・弱さの証
.
.
「んじゃ、うまくやれよ?A」
手を挙げ、微笑を漏らすその男
.
.
「・・・いきなり、呼び捨て?」
「しゃーねェだろ?
テメェの苗字は偽名なんだから。
…ちゃんと本当の名前で呼びてェじゃん」
.
大きく脈打つ心臓を誤魔化す術は
どこにある?
.
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「・・・あんた、おかしな人」
「んなこたァいわれ慣れてんだよ。
それと、俺ァ"あんた"じゃなくて
坂田銀時だ。覚えとけ」
.
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最後にそう名乗った男は
さっきと同じように、だるそうな様子で
ーーー街に消えて行った
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night - 言い表せないほど格好良かったです。ここまでの物を考えられるシュシュさんはきっと素晴らしい方なんだと思いました。最高です。素晴らしい物語を、ありがとうございました。(口下手ですみません) (2017年8月18日 22時) (レス) id: c9c76cd361 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 華桜さん» 本当ですか!?嬉しいです!最後まで読んでくださって、光栄です!ありがとうございました! (2016年7月24日 9時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)
華桜 - 涙で前が見えないっ…!ラストで一人号泣してました。とても素晴らしいお話です! (2016年7月24日 0時) (レス) id: cc8f06af1c (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ(プロフ) - 月夜の銀の魂さん» コメントありがとうございます!読んでくださってすごく嬉しいです!楽しんでいただけていれば光栄です! (2016年6月18日 10時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の銀の魂 - とても面白かったです 最後は心臓バクバクでした。 絵もとても上手てうらやましいです (2016年6月18日 9時) (レス) id: 468a375fbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シュシュ | 作成日時:2014年9月20日 20時