【銀魂】金と愛嬌

逃げ場なし ページ31

(ふざけてる・・・)




この私が、慰謝料という建前だとはいえ、
一度狙った金を手にできなかった。


ーーーあの男に、完全に流された。

いや、その言い分によれば、キスをしたのは
私からだったというじゃないか。
ありえない、・・と思いたいのに。





(・・・どうも、私があの人にキスするって
状況に、納得してしまってるみたい)





根拠はない。なんでだ。




どくどくと未だ休まず音を鳴らす心臓を
衣服の上からぎゅっと掴む。

なんでだ。






「・・あんな出来事くらいで、私らしくない」






キスなんて初めてじゃないし。

これまでたくさんしてきたのは本当だ。
お付き合いした男性だってたくさん。


ーーーーなのに、・・こんな状態になったのは
初めてだ。







「ッ、そうだ。きっと土方さんが、他の男性と
性質が全く違うからだよ。うんきっとそうだ」


現代では稀に見る堅物というか。
自分にも他人にも厳しい、これぞ武士！って
感じの人というか。

・・・私が出会った事のないタイプだからだ。






「ーーーーでなけりゃありえない！！！！」
「何がありえねーんです？」

「だうわっ！？」





思わずのけぞってしまう。
わかってるよ犯人は。





「お、沖田くん、お疲れ様です」

「お疲れさん。つっても今日はまだ
仕事してなさそうですねィ」

「そっくりそのままお返ししますその言葉」





沖田君だって寝起きの顔じゃん
今の今まで寝てたの？もう12時だけど。






「いやァ昨日は徹夜だったんで、今日はちと
遅くまで寝させてもらいやした」

「徹夜？珍しいですね。あなたがそんなに仕事
してたなんて」

「仕事なわけねーでしょ」

「・・・・・・はい？」






あぁ、嫌な予感というのはこの感覚のことか。

沖田君は私の不安をなぞるように
黒く楽しげに笑みを浮かべた。








「ーーーーー昨日の夜は、ずいぶん面白ェこと
してやしたね、・・・二人で」




たらり。嫌な汗が頬を伝う。

沖田君、あなたの脳内を今すぐリセットさせて
やりたい。記憶操作を施してやりたい。

確実に、"あのこと"である。








「何のこと？ゆ、夢じゃないかなきっと！！」

「えーそれはありえやせんよ。だってほら、
このカメラに映像証拠が」

「あらまあなんて用意周到！！」




さすが警察！！・・・て、そうじゃない。






(これつまり・・)







逃げ場なし。

敵→←強者だ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す