【銀魂】金と愛嬌

強者だ ページ30

ー土方サイドー




ぶわりとわかりやすいほどに
赤くなるそいつの顔。

そういう俺も、今は体が熱い。
先ほど顔の赤さを指摘されたが、あながち
間違ってなさそうだ。






「・・・ったく、そういうことだ。どっちかと
言やァ、俺が慰謝料請求してーよ」

「そ、そそそんな！お金なんてあげませんよ！
それならいっそ切腹します！」

「金の順位が命より上か。クズだな」





こんな時でも金か、と呆れるとともに知らない
間にあらぬ疑いをかけられていたことに
驚いてしまう。

まさかあの泥酔状態の中で記憶が残っていた
とはまた見事なもんだ。

こっちが気を使ってなかったことにしてやった
ってのに。結局振り回されたのは俺だ







「・・・・・まあいいです。キスなんてお金と
引き換えに数多の男性とかわしてきましたから
今更チェリーとのキスが増えたくらいでキャー
キャー騒ぐような処女でもありませんし」

「誰がチェリーだ馬鹿野郎！？つかどんだけ
金好きなんだテメェ！」


「ということなんでキス代払ってくれます？」
「払わねーよ！被害者俺ェェェ！」





最初こそ動じていた様子だったが、
しばらくたった今、この調子だ

・・・まったく、強者だこの女は。





まあ確かにお互い、酔った勢いで口付けられた
ことにギャーコラいうような歳でもねェか、と
不覚にもそいつの言葉に納得する。








「・・・ハァ。とにかく、ありゃ事故だ。
わかったら仕事に戻れ雇われ人」

「・・・」

「あ？なんだよ」

「ッ、別に？では失礼します犯罪者さん」





最後まで減らず口だな、と
湧き上がる苛立ちを抑え、紙面に目を戻す。




障子のしまった音を聞き取り、やっと
面倒なのがいなくなった、とため息をついた






(ーーーーにしても、)





最後、この部屋を去るときに見せた
あの複雑なツラは何だったんだ。


口調とは相対して、最後まで赤みが
引かなかったそいつの顔が、浮かんで消えた

逃げ場なし→←被害者

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