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｢なぜあんな所に…｣
ここへ来て問題が起きた。
なんと、
借りようとしていた本は自分の目線のかなり上の方、
背を伸ばして手を伸ばしても、
ちょんっと触れるくらいの高さにあったのだ。
飛び跳ねてみても惜しくも届かず。イスや台も近くにはない。
｢ふっ……く、｣
もう一度、精一杯背伸びしてみたけど結果は同じ。
もういいや諦めよう。
脚の力を抜いて、
その場から離れようとしたとき
横のほうから｢あ。｣と気の抜けた声がした。
振り向くと、我が愛しの太一がこちらを見ていた。
ありがとう神様。
今日もあなた様は私の味方だった。
｢たいち…っ！｣
｢あーはいはい。静かに｣
｢はーいっ｣
｢どっちが歳上か分かんない。というか何してるんですか？本探し？｣
｢うん。本はあったんだけど取れないの｣
あの緑の帯のやつ。と頭上の本を指さすと、
太一は「ああ、あれね」と軽く返した。
｢まあ、今日絶対いるわけじゃ、｣
ないし、と言い終える前に隣から長い腕が伸びて、
お目当ての本をスッと手にした。
｢あ、いらなかった？｣
｢えっ。い、いや……｣
目の前のゆるく腕まくりされたシャツから覗く太一の腕をじっと見つめる。
自分のとは違って筋肉質で少し角張っているそれ。
ああ、これが男の子なんだ…太一も、ちゃんと男の…
｢あのー、Aさん｣
｢あっごめん。ありがとう太一｣
ハッとして本を受け取る。
いかんいかん。普段見慣れている光景なはずなのに、
思わず見とれてしまった。
いや、腕の長さや骨格にも驚いたけど、
｢太一ほんと身長おっきいね｣
｢あー188だったかな。多分｣
｢は！？ほぼ190cmじゃんか！｣
｢しー。うるさい｣
｢あっ、しまった…！ごめん｣
本を持ってないほうの手で口を塞いで謝ると、
太一が口に手を当てながら小さく笑った。
ええ、可愛い。可愛い可愛い可愛い！！
誰かカメラをくれ。この笑顔保存したい…！
｢聞き分けの悪い子どもかよ｣
｢いや、今は我が子を愛する母親の気分…！｣
｢理解不能なんすけど｣
気付けばさっきまで頭の中にいっぱいあったモヤモヤは
綺麗さっぱり消えてしまっていた。
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作者名：nome. | 作成日時：2017年2月12日 0時
