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｢でも、ほんとに良かったな｣
イスに横座りして、落ち着きを取り戻した私の机の上に頬杖をつきながらミンミンが優しく言う。
どうやら昨日の部活時に太一から直接このことを聞いたらしい。
｢うん！本当にありがとね｣
助言して勇気をくれたり、私たちの関係を後押ししてくれたり、
ほんとミンミンには感謝の気持ちでいっぱいだ。
｢や、俺は特に何もしてねぇよ｣
｢いやいや、君はほんとに良い男だよ。私服は最っ悪だけど｣
｢おう。ってんだとコラッ｣
必死に怒っているミンミンが面白くて、あははっ！と声を出して笑いかけると、
それにつられて彼も眉尻を下げて笑った。
この野郎。と笑いながら額を軽く小突かれる。
｢まぁ、お前も忙しいだろうけど時々電話とかしてやれよ。
アイツも喜ぶだろうし｣
｢へへっ、へ……｣
その言葉を聞いて徐々に自分から笑顔が消えていくのが分かる。
太一に電話、…連絡先、れん、らく……
あ、あれ？？？
青ざめていく私の顔を見て、
｢お前、まさか…｣とミンミンが目を見開く。
｢川西の連絡先知らないのか？｣
｢……し、しらな、｣
｢あんだけストーカーしててか！？｣
｢ストーカーって言わないでぇ…｣
なんたる不覚………っ！！！
今までそんなに意識したことなかったけど、
私は太一の連絡先を知らなかった。
今までは学校で会えただけでも嬉しかったけど、
卒業したら会えなくなる訳だし。
太一の声が聞きたくなることもあるだろうし。
この先、太一と音信不通になるなんてムリ！
んなの私は耐えられないぞっ！！！！
｢ミンミンは持ってるんでしょ！？太一の連絡先！｣
｢そりゃあ、まあ…同じ部活だし｣
｢くれっ！！！｣
｢マジな顔して言うんじゃねぇよ｣
それに勝手に教えるのはダメだろ。
ミンミンが顔を歪ませながらボソボソと呟く。
いいじゃんか、ケチ。
ミンミンのケチんぼ。ズボンに穴でも開いてしまえ。
心の中で地味にイヤな呪いをミンミンにかけた。
｢ねえ、ミンミンってば｣
｢ダメだっての｣
結局、放課後になるまでに、
あらゆる手で交渉を試みたけど太一の連絡先を教えてくれなかった。
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作者名：nome. | 作成日時：2017年2月12日 0時
