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｢おい、お前それアイツらに言ったのか。｣
両手で顔を隠したままの私に、
ミンミンが少し顔を近づけ小声で尋ねる。
アイツら、とは私の友人たちのことだろう。
｢言った…｣
｢なんて言ってた｣
｢『そうなると思ってた』って｣
太一への気持ちが自分のなかで確実なものへとなり
友人たちにその事を伝えると、
意外にも納得した様子で、心做しか嬉しそうだった。
｢正直言うと俺もそうなると思ってた｣
｢えっ｣
｢だってお前、明らかに川西のこと好きだったし｣
｢っ、｣
両手から顔を離して反論しようとするが、
今まで向けてきた太一への感情を思い返すと
彼に対して"無自覚に"恋をしていたのかもしれないと思いやめた。
｢でもさ…私のこの気持ちって迷惑にならない？
太一からしたら私ってただの先輩だろうし、バレー部いま忙しいし｣
俯きながら、そう弱々しく呟く。
私と話すのは楽しいという言葉を
太一の口から聞けた時、すごく嬉しかったし、
ほんの少しだけ期待もした。
私は少しでも太一の特別な存在になれたんじゃないかと。
でも、それはそれで。
太一が私に恋愛感情をもって言ってくれているとは限らなくて。
自問自答してはガクッと肩を落とした。
｢まぁ、確かに予選前だけど。でも、そのままだとお前がスッキリしないだろ｣
｢う…｣
｢川西もお前の妙な言動にモヤモヤしてるだろうし｣
｢ちょ、妙な言動って…！｣
勢いよく握りしめた右手を振り上げると、
｢ああ俺が悪かった！落ち着け！｣とミンミンがそれを押さえた。
｢とにかく、出来るだけ早めにその気持ちは伝えてやれ。
そのせいかアイツも最近調子良くないから｣
｢えっ、｣
それを聞いて右手の力が一気に緩まる。
その話もっと聞きたい、と口を開こうとしたら
タイミングよく予鈴が鳴った。
クラスメイトが席に着き授業の準備をする。
ミンミンも机の上に教科書を出しつつ、黒板の方を向こうとする。
｢とにかくなぁ、A｣
｢ん？｣
｢逃げるのが一番よくねぇからな｣
前を向く途中、彼は私に聞こえるくらいの声でそう言った。
｢！……そうだね、ありがとうミンミン｣
さっきは叩いてごめんね。
小声でお礼と謝罪の言葉を伝えると、
その背中の向こうで彼が笑った気がした。
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作者名：nome. | 作成日時：2017年2月12日 0時
