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ど、どうしよう。
あっさりと太一に捕まえられてしまった。
「…え……ちょ、」
どうにか逃げようと試みるけど、
太一の手は私のジャージを掴んだまま放さない。
「タオルとか、ほんとありがと」
焦る私とは裏腹に当の本人は表情ひとつ変えずに女の子にそう告げる。
「え?…あ、ああ、いいの全然!
じゃあ私そろそろ行くね。先輩もすみません」
「へ!?い、いえそんな…!」
少し慌てた様子で頭を下げる女の子に
こちらもペコペコと頭を下げると女の子は走って去っていった。
気をつかうはずが、逆に気をつかわせてしまったようだ。
「………………」
再び太一と2人きりになった。
お互い話すことはなく、しばらく沈黙が続く。
未だに私のジャージは掴まれたままだ。
な、なんで離さないんだ……??
理由を聞こうにも、なんて話しかければいいいのか分からずに戸惑う。
太一はこちらを見もせず口も開かない。
どこを見ているのか、もしくは何も見ていないのか、
その表情をうまく見ることができない。
たいち、と名前を呼ぼうとしたとき、
「ごゆっくり〜って、なに?」
「……え?」
控えめだけど芯のある声で話し掛けられた。
それは初めて聞くもので。
なんだか冷たくて、どこか拗ねたような声だった。
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作者名:nome. | 作成日時:2017年2月12日 0時