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明るい声の方を振り返ると、髪を1つ結びにした女の子がこちらに駆け寄ってきた。
「あっ、こんにちは…!」
「こ、こんにちは」
何かしらの死角で見えなかったのか、
私を見て少しビックリしながらも、きちんと挨拶をする。
体操服を見る限り2年生、つまり太一と同級生の子。
挨拶もしっかり出来て表情は明るくて気さくで、
なんだか可愛らしい子だ。
しかも心做しか、私より胸がある気がする。
「すみません、お話中でしたよね」
「え、いや大丈夫だよ!私のことは気にせずにどうぞ」
顔を横に振って2人から少し距離をとる。
女の子は、すぐ終わりますので!と軽く頭を下げた。
「川西この間はタオル貸してくれてありがとう。あ、これお礼!」
そう言って、綺麗に畳まれたタオルとポカリが手渡される。
「いーえ。お礼なんていいのに」
「いやいや。あの時ほんと助かったから!」
「そっか。…あ、いい匂いする。洗濯してくれたの?」
「タオル使ったからね。匂いキツくない?」
「全然大丈夫」
仲睦まじく話す2人。……なんか、嫌だ。
まるで左胸の下あたりに、泥のような濁ってて少し重たいものがあるような感じ。
そっか。タオルを貸してたんだ。
この可愛らしい子に、太一が……へえ、そうなんだ。
ペットボトルの表面についた水滴を指先でなぞりながら、ふと思う。
あれ?
さっき『私のことは気にせずに』とか言ったけど、私ここにいる必要ないんじゃないか??
目的のジュースも手元にはあるし太一との会話もさっき終わった…と思う。
むしろ私がいることで迷惑なんじゃないだろうか。
気を遣わせてしまうんじゃないだろうか。
うん、そうだ、絶対そう。私すごく邪魔だ。
心の中のモヤモヤを無理やり消し去るように
ムダに開き直って顔を上げる。
「わ、私そろそろ戻るね……ごゆっくり〜」
小声でそう囁いて、その場から逃げようとした時、
グイッと着ていたジャージの裾を引っ張られた。
「う、わっ」
突然のことで足元がふらつく。
驚くことに、ジャージを掴んでたのは太一だった。
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作者名:nome. | 作成日時:2017年2月12日 0時