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「あっ、いや、ちがうの」







ゆっくりと後退りしながら、

言い訳じみた言葉を何度もこぼす。









ダメだ。パニックになりすぎて言葉がうまく出てこない。









「今のは、びっくりして、」







焦りからかドッドッと心臓が激しく動く。


耳と、顔全体に、一気に熱が集まる。









ああどうしよ。汗かいてきた。


はやく、今すぐにここを去りたい。









「あの、Aさ…」


「っ、と、友達がッ!!」








太一の言葉を遮るように勢いよく立ち上がる。

太一は変わらぬ表情のまま見上げていた。




いつも見下ろされてばかりだからか、なんか変な感じだ。









「友達が待ってるの!体育館で!
す、すぐに戻らないと!って事でまたね太一!」








立った勢いに任せながら早口でカタコトの言葉で告げる。

くるっと背を向けてこの場を去ろうとしかけた時、






「あっ、だめ」


「っ!?」






またしても太一に腕を掴まれてしまった。

まさか今日1日で、2回も太一の反射神経にやられるとは。





顔を見られないように慌ててジャージの袖で隠す。






「なんで隠すの」


「い、色々あって」


「色々って?」


「色々は…いろいろだよ」


「そっすか」






その口調からして諦めくれたのだと安心し、

腕の力を緩めた途端、








「あっ!?」








ぐいっと顔を隠していたほうの腕を強い力で引っ張られた。


これで両腕とも太一に掴まれてしまう。









「……え、」


「あっだめ、待って、見ないで」









私の顔を見た太一が、目を見開く。





み、見られた。

やだ、恥ずかし、こんなの、







「〜〜っ、ごめんなさいいっ」







唖然としたままの太一の隙をついて、

掴まれていた腕を精一杯に解くと振り返ることもなくその場から全速力で走って逃げた。



買ったはずのジュースを忘れてきたことに気付いたのは、
あれ。ジュース買わなかったんだ。と友人に言われてからだった。

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作者名:nome. | 作成日時:2017年2月12日 0時

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