24.楽しければ ページ25
矢巾side
『うーん……』
「そんなに悩まないでくださいよ！違うところでもいいですから！！」
俺が思わず声をあげてしまったのは、一日デート権をゲットし、予定を決めようと張り切っていたときのことだ。
少し遠くの植物園に行くか、美味しいもの巡りか。
なるべく女子が喜びそうな雰囲気のものを選んだつもりだったが、どうやら気に食わなかったらしい。
『そうじゃないよ！どっちも本当に行きたいから迷ってるの！！』
どっちも行きたい。この言葉で俺の心はほわほわした。
こうして聞いてみると、Aさんには2回俺とデートするって考えが無いんだろうな、と若干ショックを受ける。
ちょっとした勝手な仕返しとして、意地悪を言ってみる。
「俺ともう1回会えば良いじゃないですか。」
Aさんは予想通り、あの綺麗な笑顔で『そうだね』と言ってくれた。
…嘘。
俺になんて気持ちが無いのはとっくにわかりきってる。
もう俺に望みなんてのは無いってことも。
だからこそ…
「楽しい方を選んでくださいよ。」
忘れないように。
大事に、大事に思い出を作るんだ。
結局Aさんは植物園を選んだ。
『わぁぁ…！』
敷地に一足突っ込むと、思っていたよりかは新鮮な空気が肺に流れ込んできた。
蒸し暑くて嫌かなって思ってたけど、大丈夫そうだ。
『わ！すごい！！すごいねぇ！！』
「ちょ、落ち着いて。」
『落ち着いていられますか！？』
「あなたには無理そうですね。」
さっきから自然はすごいなどと叫んでいるAさん。
俺にはあなたのほうがよほど心が澄んでいるように見えますがね。
「あっ、この花綺麗だ。」
ふと足元に見つけた名の分からない花。
白くてふわふわしてて、Aさんみたいだ。
『あっ、本当だね！矢巾くんみたい！』
「…えっ、」
俺と同じこと思ってたんだ。
価値観が合っている感じがして少し嬉しくなった。
「俺はAさんみたいだなって思ってましたよ！」
どう足掻いても叶わない望みなら、
少し背伸びをして。
なんでもないフリをしてみても良いじゃないか。
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yuiki(プロフ) - 紫蘇さん» ありがとうございます！男の子視点だったので感情移入しやすい作品を作りたかったので！ (2020年1月12日 21時) (
レス) id: ecc4c0e98e (このIDを非表示/違反報告)
紫蘇 - 泣きました、めっちゃ良かったです(T−T) (2020年1月12日 21時) (レス) id: 7a199b70b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yuiki | 作成日時：2019年7月16日 10時
