第103話 Happy Valentine ページ13
いつものアパート。
水族館デートなるものが終わり、晩飯も食べたその帰り。
俺達は変わりなくAの家の前で話をしていた。
久しぶりに行った水族館は想像以上に楽しく、綺麗で、Aとのいい思い出になったと思う。食べた寿司も思う存分食べれたし、とてもいいデートになった。
「お寿司、ご馳走になっちゃってごめんなさい」
「ええって。俺のが多く食べたし、チケット手配したり今日のデート誘ってくれたんはAやし」
俺としては彼女に尽くせて嬉しいし。
……さて。
実は今日のデート中、俺は内心そわそわしていた。何故なら、まだ本日の重大イベントが残っているからだ。
今日はバレンタインやったらしい。
いや、忘れてたよな。ほんま。
毎年、バレンタインの日を認識すんのはT○itterとかやし、社会人になってから貰うなんてことなかったし。
……嬉しくないわけがない。キョドらないわけがない。
だって、好きな人からのチョコやぞ?愛しの彼女からの初バレンタインやぞ?
これで楽しみじゃないやつは人間辞めてるわ、まじで。
と、まぁポーカーフェイスを保つのが大変な1日やった。
「それじゃあ今日はありがとうございました!」
…………ん?
「水族館デート楽しかったです!篠原さんも気をつけて帰ってくださいね」
……あっれ……?
Aはそういうと、慣れた手つきで玄関の鍵を開け、手を振りながら中に入っていった。
……思ってたんとちゃう。
想像と違い、反射的に振り返していた手が固まる。
はぁ、とデカい溜め息が溢れ手を下ろす。
Aのことやし、Aも準備し忘れてたとか、失敗したとかなんやろ。
「…………舞い上がったな…」
……帰ろ。
「一体何に舞がったのかな?篠原さん?」
と、俺の背後から顔を覗かせたのは愛しの彼女だった。
「っえ」
「忘れる訳ないじゃないですか、私も楽しみにしてたんですから」
にやり、とAは笑いラッピングされた袋を取り出す。
「あっれ〜?篠原さん、お顔が赤いんじゃありませんの〜?」
俺の顔を覗き込むようにAは見上げる。
……別に照れてなんてねーし。余裕ない訳やないし!
「……見間違いやろ」
「ドッキリ成功かな。ま、それはともかく」
Aは一歩下がると袋を差し出して微笑む。
「ハッピーバレンタイン!」
袋を受け取って、Aを抱き締める。
「……ほんと好き」
彼女の赤くなった耳を見て、俺は一生愛すことを誓った。
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作者名:アンバ | 作者ホームページ:ないと思ったか!……ないんですよねぇ
作成日時:2022年7月23日 17時