第92話 決断 ページ1
ショッピとしての仕事(ほぼ遊び)が終わった｡午後十時｡日課のように行きつけのコンビニに行こうと､俺はバイクに跨った｡
少し先の踏み切りが鳴り､遮断棒が降りていくのが見える｡
踏み切りの先にあるコンビニに寄りたい俺は､スピードを落とし､一旦止まる｡
あの日から約４ヶ月が経った｡付き合ってからは一週間と少し｡早いようで､懐かしい｡
Aの自殺未遂｡
俺の身バレ｡
そんな大事件が起きたのは去年の九月｡
あの日､俺の中の何かが変わった｡
踏み切りの中を､電車が通り風が吹いた｡
遠目に見えるコンビニには小さな人影が｡
バイクをふかして発進させて､スピードを出す｡
彼女の姿が徐々にはっきりしていく｡
「篠原さーん!」
「お疲れさま､A」
微笑んで言えば､更に笑って「こんばんは!」とAは言った｡
身体に染み付いた動きでバイクを止めて､俺はAの元へ行く｡
「今日は冷えましたねぇ」
「ほんまに｡ウチの会社､全然暖房効いてないから寒くて仕方なかったわ」
「布団でぬくぬくしたい」
「こたつ入りたいっすね」
ミカン食べたくなっちゃいました､とAは笑う｡
彼女の本当に幸せそうに細められる目は､見ているコッチもつられて口角が上がってしまう｡
……可愛い｡好き｡天下一品｡俺の彼女
俺のこんな荒れてる脳内も､きっと自分の彼女へのものなら何の問題も無いはずや｡きっと｡
「あの…篠原さん｡例の件なんですけど…」
Aの言葉に俺は姿勢を正す｡
例の件とは､クリスマスイヴの時にロボロシャオロンに「我々だの仲間になってほしい」という誘いの事だった｡
「メンバーになるのは断ろうかな､と思いまして」
Aは続ける｡
「やっぱり我々だは憧れが強くて｡一番の理由はそれですかね｡単純ですけどw皆を見て笑うくらいが丁度いいかなぁ､って」
Aは来年､大学四年生になるため､卒業論文や卒業制作､就職で忙しくなる｡クリスマスイヴの時のお願いはどうしようか､となっていたのだ｡
「いいと思う｡てかグルさんが勝手に誘っただけやし」
暗黒微笑を浮べるグルさんを想像し､俺は軽く笑って言った｡
俺としては､Aをアイツらの会話に混ぜるのは危険だと思ってたしな……
Aもくすり､と笑う｡
しかし､Aは何か思い出したかのように俺に問うた｡
「……というより､篠原さん､ちゃっかり私のこと呼び捨ててますよね？」
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作者名：アンバ | 作者ホームページ：ないと思ったか！……ないんですよねぇ
作成日時：2022年7月23日 17時
