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「そんな理由でこっちに来ちまったのか?!」
「うう、お恥ずかしながら…」
穴があったら入りたいとはまさにこのことであろう。あんずは思わず俯いた。足も強く捻り翼も折った理由が、まさか“蝶々を追いかけていたら井戸に落っこちた”だとはどんなに間抜けなことだろう。瀬名先輩が聞いたら顔を真っ赤にして怒るだろう、いやまさかとは思うが卒倒するかもしれない…。
「まあまあ嬢ちゃん、やってしまったものは仕方ないのだからそう落ち込むでないぞ。」
ちなみにわんこの淹れるティーは絶品だから飲んでみてはどうじゃ?とお茶目に首をかしげる零さんに途轍もない包容力と癒しの力を感じながらティーを口に含む。途端に爽やかなアッサムの香りが広がる。
「…!おいしいです!」
「そうじゃろうそうじゃろう」
零が見る者をとろけさせる笑みを浮かべる。微笑みあう零とあんずは紅茶の香りも相まってまるでお花畑にいる仲睦まじい孫と祖父の様だ。場の雰囲気に耐えられなくなった晃牙が「うがー!!」と声を上げ立ち上がる。それは突然ドアが開かれるのとそれはほぼ同時だった。
「朔間さん!!!女の子の匂いがするんだけどどういうことなの!」
突然の乱入者に驚くあんずに反し、面倒くさい事になったぞ、天を仰ぐ零と晃牙。
「わー!何その子猫ちゃん!!俺へのプレゼント?」
ありがとう朔間さん!と騒ぐ薫に零があんずをかばいながら吐き捨てる。
「そんな訳ないじゃろう」
それを見ていた乙狩アドニス。彼は勤勉で小さく弱きものを放っておけない性分だ。そんな優しさからアドニスは薫に進言する。
「薫、客人の前ではあまり騒がない方がいいぞ。」
「そんなこと言ってられないよ!ねえ君!僕とイイコトしない?」
優しいアドニスの言葉を無視しあんずにセクハラまがいの言葉を投げかける薫に零が怒りの鉄槌を加える。
「痛いよ朔間さん!ごめんって!!」
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作者名:春夏秋冬 ハイラ | 作成日時:2019年5月19日 18時