この世界の片隅に4【土方十四郎】 (ページ10)

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百六十ページ10

『…ねぇ、十四郎ちゃんどうしてる？』

気になることを口にすれば総悟くんはあからさまに顔を顰めた。

聞いたことが間違いだと言わんばかりに顔を外方に向けられたので私も自然と視線が落ちた。

「あのヤローは動く気ねェよ」

『…だと思った』

「だと思ったって…お前ェ分かってたのかィ」

『十四郎ちゃんは昔っからそうじゃん』

ーーーそう、昔からだ。

彼は相手のことを一番に考え、これでいいと決めつけてしまう。それをすればそこから動くことがない。

どんなに心に入り込まれようが、どんなに思っていようが。

現にミツバちゃんに対してがそうだった。

彼女が心を決めて伸ばした手を取る事はなかった。それはミツバちゃんの幸せを祈ってのことだったのは誰もが分かってた。

人斬りの隣にいても、コイツは幸せになれない。なんて思ったんだろう。

そして今回も、だ。

ミツバちゃんの時と状況は違うが、私が決めた道ならば俺は入る隙もないし邪魔する隙もないなんて思ってるんだろう。

…私的には連れ戻しに来て欲しかったなんて淡い期待を最初は抱いてたけど。
それが現実になる事はなかったが。

熱いし優しい男なんだよね、本当は。
ただあの顔や性格の所為で誤解されてしまってるのだが…。

『総悟くん、なんで私嫁にくるの承諾したと思う？』

「そらァ…お前ェの実母が死んだことへ責任を感じて…じゃねェのかィ？」

『んー、まぁ2割正解。』

「……どういうことでさァ」

目の色が変わった。

私がここに来た理由は確かに母である雪さんの縁談を無しにしない為、おじいさまを救う為でもある。

けれど本当は、もっと別件なのだ。

『雪さんの婚約者はね、攘夷志士なの』

総悟くんの瞳が揺れた。