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幻聴だと思った。
だって、聞こえるはずない。
でも姿が見えるんじゃないかと、瞼を開けたくなった。
『…なんで、』
(ーーー…なんで来ちゃうかなあ)
真っ黒な隊服をまとった男達がそこにいて。
それを携え、先頭に立つ三人は会いたくて仕方なかった人たち。
「罪状は多過ぎて読むのは面倒だ、とりあえず神妙にお縄につけ」
『いや省略すんなよ、そこ大事なとこ!お前局長だろ‼』
「変な顔してんじゃねェや。…いや元々変な面か」
『てめェさらりと貶してんじゃねーよ‼』
「…ったく、何…勝手なことしてんだ」
『てめェこそ何してんだ‼土方スペシャル食ってんじゃねェ‼‼』
相変わらず過ぎる。
蘭たちも呆れて物を言わないし。…そりゃそうだよね、こんな緊張感しかないところで自由にやってんだから。
しかも後ろの馬鹿も…。
『山崎‼アンタは何ミントンしてんだ!』
「…ハッ!?俺としたことが…」
『え?何?アンタら何しにきたの?ふざけにきたの?マジぶん殴らせろ』
「…ふぅ、とりあえず落ち着けA」
土方スペシャルを食べ終わったのか煙草に火をつけ煙を吐く。
…今更格好付けてもなんもつかねえからな。寧ろ引いてるよ、アンタらの図太い神経に拍手したいくらいには引いてる。
近藤さんも総悟くんも何事もなかったように顔キメるのやめてくんないかな、今あったからね?ギャグ的要素満載だったからね?
そんなツッコミなんて知らず十四郎ちゃんは私の方へ睨みを効かす。
「顔変えてまで復讐したかったようだなァ」
「あ…やっと終わりましたのね」
「あ?」
「茶番劇、長過ぎて殺してやろうかと」
首筋に当たるヒヤリとした感覚。
目線を下へと動かせば短刀が目に入る。
ピリッとした痛みが走り、何かが首筋を伝う。それを見た黒服たちは先程のおふざけなんか無かったように顔を強張らせた。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年10月26日 11時