この世界の片隅に4【土方十四郎】 (ページ31)

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百八十一ページ31

軋む床の音とバタバタとした足音を携えて向かうは式場。

「私は所詮駒の一つにすぎないんですよ」

高橋が言葉を言い放ち切ると私は一度しまったそれを抜いて、腹を割いた。

誤算だった。
まさかこれが囮だったなんて。

狙いは…

「おいA！どうなってんだ！そろそろ説明しやがれ‼」

事に気付いていない旦那の言葉が背中へと刺さる。
後ろへ目線を向ければ、どこか焦った顔をしていた。

無理もない、向かう先には神楽ちゃんにお妙さん。
そして私の身代わりとなった新八くんがいる。

大切な人を一気に人質に取られたらこっちはどうにもできない。それにきっと私も旦那と同じ顔をしてるから。

『あの取引の会話は私にわざと聞かせたんです！』

私がこの場所を知ったのは高橋がお祖父様と神無月を訪ねてきた時だ。薬と武器の取引をこの式場ですると。
でもあれはフェイクの情報で

『飯島が一度うちに来たことあったんです、お祖父様を訪ねて』

「そりゃ何しに」

『でもあの、私のいた家は…』

「お前ェんとこのジジイに雇われてる奴のだよな」

『そうなんです、あの時はなんの疑いもなかったけど…でも今考えてみればおかしい。そしてあの男が訪ねてきたのはお祖父様が理由じゃない』

「そりゃなんだよ」

『…』

「A‼」

足を止めると旦那は私の肩を掴んだ。

ふとあった目は酷く悲しそうで、目を逸らしたくなった。
ふぅ、と一度息を吐いて。

『私が身代わりを作るのはバレてたんです。そして私が会場から離れることも』

「でもそれって」

『ええ、今日の今日まで旦那達にも隠していました。でも漏れてるんです』

「おい、それじゃあまるで裏切り者が…」

そこまで言って旦那の顔が歪んだ。
口元に手を当ててマジかよ、と声を漏らした。

きっと、彼は気付いた。
今何が起きているのかも、何がこの状況を作り出してるのかも。

ーーーあの件が終わってないことも。