この世界の片隅に4【土方十四郎】 (ページ16)

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百六十六ページ16

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「こんにちは、Aさん」

『俊之助様。御足労お掛けしてすみません』

「いいんですよ、僕が会いたかっただけですから」

12月の半ば。
そろそろクリスマスだなぁなんてムードの漂う江戸の町とは違い、この家はひと月前とは変わらない。

そんな日に俊之助様が訪ねてきた。
高そうな紺色着物に身を包んだその人は私の近くに座る。

呼ばれてきたお付きの人が畳へと置いたのは桃色の派手な着物。

「婚儀の日程ですが、クリスマスの日に僕の屋敷で身内だけを集めてやろうかと思っているのだが…どうかな？」

『ええ。大丈夫ですよ』

「それでだな婚儀の着物なんだがAさんはまだ若いだろう？だからこの着物はどうかと思って持ってきたのだが…」

それを手に取ればなんだかこれもまた高そうで。
そして思ったんだ、私には似合わないなぁと。

…てか婚儀に色物の着物って。普通白無垢じゃなくて？それが定番じゃなくて？
なんなら最近はウエディングドレスとやらもあるんだよ？白いふわふわのやつ。

どうだろ、いいだろ。なんてドヤ顔されちゃあ断れる訳もなく…

『とても良い着物ですね、気に入りました』

「そうかそうか！やはりそなたくらいの歳はこういうのが好みか！」

ガハガハと口を開けて笑うのに合わせて私も笑う。

…んなことねぇぞって言いたい。
なんなら私は白無垢着たかったよ、それかウエディングドレス着たかったよ。

つか若者がみんな桃色好きな訳じゃねーからな、このクソ親父。

なんて悪態を心の中でついておく。

「他の着物も用意してるんだ。見てくれるか？」

『あ…はい…』

いやこれにするんじゃねーのかよ。