百六十四 side-S ページ14
ーーー沖田side
Aに会ったあの日に聞いた婚約者の名前。
ソイツは幕府の上の連中から目をつけられてる男だった。
それは真選組でも名前が挙がっていて普段会議を右から左で受け流してる俺ですら覚えていた。
そして彼女の口から語られたのは
『雪さんの婚約者はね、攘夷志士なの』
衝撃的だったがあの馬鹿のしたことを考えりゃ合点がいった。
帰りに奉行所へ立ち寄ってみりゃあら吃驚。
幕府の金横領の疑惑とは別に攘夷浪士と繋がりがある可能性が出ていやがった。
その資料を奉行所に頼んで数日後の今日。
取りに来りゃァほぼ黒に近い判断が出ていて、俺が知らねェ間に真選組でも密偵が出ていた。
Aはその事実を知って、わざと嫁に行った。
アイツはァこの件は私の責任だとか無駄なこと思ってんだろうなとすぐに気づく。
きっとあの馬鹿のことだ。これを一人で片付けるつもりなんだろ。
その為に真選組を辞めて屯所を去った。
大方そんな理由だろう。
土方のヤローはどうせその男がAの婚約者になった男だということを知らねェだろうと思って、こうして喋りに来てやりゃ案の定目を丸くしてやがる。
「あの馬鹿、その男が攘夷浪士なの知ってやしたぜ」
「…本当にAに会ってきたんだな」
「ちょいと前にね。アイツ気づいてて嫁に行ったようで」
土方のヤローの顔が分かるように歪んだ。
きっとこの男もわかってる、この状況は二度目だということに。
(ーー…畜生、姉上の次はAかィ)
土方と俺の舌打ちが重なった。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年10月26日 11時