この世界の片隅に4【土方十四郎】 (ページ12)

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百六十二ページ12

『…なら、尚更巻き込めないね』

「ったく面倒臭ェことになったなァ」

ガシガシと頭を掻きながら視線は棚の上。

そこには武州時代の写真。
近藤さん、総悟くん、十四郎ちゃん、そして＿＿＿ミツバちゃん。

…まさか私がミツバちゃんと同じような状況になるなんて思いもしなかった。
また同じことを真選組に運んでしまうなんて。

けど、私は今真選組ではなくなった。
それなのに縁談を破談にしないのは何故なのか。

「何かあった時の為にお前ェ抱え込んどきゃ手出されねェだろっつー魂胆だろ」

『…下衆ですね』

「悪いこたァ考える奴はみんなそんなもんだろ」

『ですね…』

溜息が漏れた。

こんなことになる筈じゃなかった。
でもこうなってしまった以上、真選組は巻き込みたくない。

その為に私は真選組をやめたんだ。

辿れば私が生まれ、兄様の本当の妹の代わりとして生きてきたあの時からこの件は始まっていたんだ。
生まれなければ…と何度思ったか。

そうすれば家族も兄様も蘭も雪さんも。………そして蓮も。
皆命を落とすことはなかったんだ。

(ーー…ある意味疫病神じゃん私)

自嘲が溢れる。

でもそんなの今更後悔したところで過ぎてしまったことだし、どうにかできることでもない。

だから、例え犯罪者になったとしてもどうしてもこれは私だけで片付けようと思った。

だから…

『旦那、今日までありがとうございました』

「あ？」

『ここから先は私の仕事です』

旦那へ残りの金額が入った封筒を渡す。

それを受け取った旦那の目はじっと私を見つめる。何かを見透かすような目から逃げるように背を向けた。

『犯罪の片棒を担ぐ羽目になります』

「…いいんだな」

『はい』

物は揃った。
あとは時期を伺うだけ。