百六十一 ページ11
「オーイ、馬鹿女ァ」
『なんですか犯罪者予備軍』
「ンなもんになった覚えねェわ‼」
総悟くんが帰ったのと入れ替わりで訪ねてきた旦那。
私の近くへ胡座をかけば「ほらよ」と差し出された紙束。
お礼を言ってから受け取ればからになった手は引っ込めるつもりがないらしく、そのまま叩き落とした。
前金いくら払ったと思ってるんだ、なのにまだ集るなんて…こんな大人にはなりたくない。
『…で、どーだったんですか』
「お前ェが睨んだ通り真っ黒だよ、お相手さん」
『お祖父様はそれを?』
「知らねェ訳ねーだろうなァ。現に税金泥棒たちが動いてやがる」
『…婚約者ということは?』
「バレちゃいねーが時期に知られんだろ」
雪さんの婚約者であり、そして私の現婚約者でもある
歳は40近い、お祖父様と同じ幕臣の一人である。
お金の力で幕府のお偉いさんになった、という噂があったのは真選組でも有名だった。
けれど特に黒い噂もなかったからと野放しにしていたが…。
(ーー…幕府のお金を横領…かぁ)
その男よりも下の地位であるお祖父様の娘である雪さんと縁談を結んだのか。
変だと思ってた、ずっと。
それはきっと…
『私が娘だったから…か』
「だろーな。お前の親元抱き込んじまえばこっちの黒いとこは隠せるって魂胆だろ」
団子を食べながら気怠げに言う旦那の言葉は私を納得させるには十分だった。
お祖父様は男の黒い噂を知っていた、けれど自分の地位や今後のことを考えて目を瞑り雪さんを嫁に出すことにしたんだ。
けれどその予定は狂った。
兄様の出現で雪さんは殺された、そしてそれは私へと向いた。
「似たような状況だな、あん時と」
頭に浮かんだのはミツバちゃんの顔だった。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年10月26日 11時