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解放されたのはあれから1時間後。
業務なんて放棄して根掘り葉掘りしてくるものだから私とそして十四郎ちゃんもキレた。
それでなんとか収束したものの疲れにどっと襲われた。
「A」
そう呼ぶ声は以前よりも優しくて。
後ろを振り向けば申し訳なさそうに頭を掻く十四郎ちゃん。それがおかしくて笑えばいつものむすっとした表情に戻った。
『大丈夫だから、気にしないで』
「…なんも言ってねェのによく分かったな」
『そういう顔してたからね』
付き合わなきゃよかったか?なんて今にも言いたげな顔をするから頭を引っ叩いてやった。
突然のことに目を丸くしてこちらを見るからそれが面白くて吹き出せば頭を叩き返されたから思いっきり睨んでやった。
睨みたいのはこっちだ、みたいな顔をされたが無視。
『からかわれるってことは認められたってことと同じでしょ?だからいいの』
「…面倒くせェけどな」
『ま、いいじゃない』
そうやって笑えば私の頭を撫でてそうだな、と頬を緩めるから顔が熱くなった気がして外方を向いた。
想いが伝わったあの日から十四郎ちゃんは少し優しくなった。
夜遅くまで仕事はさせなくなったし隊士が探ろうものならどっからか駆けつけて一蹴してくれるし。
…って、過保護な親みたいになってない?あれ?
まぁ大事にされてると考えればいいことなんだけどさ。
「A、今日の見廻り当番総悟と変われ」
『なんで?』
「あの馬鹿始末書溜まってんだ」
『あー分かった』
頭を撫でてじゃあ と手を上げて去っていく背中に頬が緩んだ。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年10月26日 11時