百九十五 Side-T ページ45
ーーー十四郎side
ミツバが息を引き取ってからというもののアイツへの気持ちは浮いてるようなまま、どこにやったらいいのか。
初めて抱いた気持ちは行き場をなくしていた。
そんな時に隣で背中をさすってくれたのがAだった。
妹のようにしか思ってなかったあのガキが俺の背中をさするような女になるなんて思わなくて何度か胸が跳ねたこともあった。
けど、総悟の気持ちを昔から知ってた俺はこれは大人になったAに慣れてねェだけだと言い聞かせてた。
アイツが無茶して心配になるのも
意識失って心臓が止まりそうになったのも
笑った顔を見るとホッとしたのも
全部妹みたいな存在だからだって思ってた。
アイツが兄貴と相打ちになった時は今度こそ、なんて思った。
だから毎日病院に通ってアイツが目覚めたら一番に声かけてやろう、手握っててやろうって。
それだけで俺は安心できたし、Aも目覚めてくれる気がした。
けど、回復したAが俺の前から姿を消した。
失うなんて思ってなかった存在が本当に消えてしまった。
だが副長という立場で俺が勝手に動くなんざ出来っこねェ。本心なんて出したところで俺は何ができるのか。
そう思えばいいことなんざ浮かばなくて結局何事もなかったかのように業務をこなすしかなかった。
アイツのやることがわかった時総悟に言われた。
「土方さん、Aにゃアンタしか居ねェんでさァ」
言われて気づかねェ俺じゃねえ。
俺自身、自分の気持ちにも気づいていた。
「俺は二度も好きな女を失いたかねェんだよ」
Aの目を見つめれば一筋の涙が頬を伝った。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年10月26日 11時