百九十三 ページ43
大きな溜息を態と吐けば舌打ちが降ってきた。
『何覚えてんですか、このやろー』
「あ？忘れるわけねェだろあんなこと言われたんだからよ」
『忘れるように頭かち割ってやろうか』
「おー上等だァ。やってみやがれクソガキ」
なんて悪態をついて睨んで見ても十四郎ちゃんはどこか面白そうに笑うんだ。
その顔に胸が高鳴って頬に熱が集まるような気がして外方を向いた。
正直、覚えていて欲しくなかった。
あの時はもう死ぬと思ってたし死ぬなら伝えちゃえ！なんて思い立ったら即行動みたいな、隊士らしからぬことをして。
挙句生きちゃってるし。
いや、いいことなんだけど忘れたいんです私的には。
なんて心の声が聞こえるわけもなく、白い息と共にそれを吐き出した。
『で？それ聞いて貴方はどうしたいんですか』
「どうっつーか…てめェがそう思ってるとしても俺は答えてやれねェよ」
『そう言うと思った』
「あ？」
十四郎ちゃんの心の中にはまだミツバちゃんがいる。
そんなの分かりきってるし居ないとか言われた日には総悟くんと共に暗殺でもしてやる、と決めてる。
けど十四郎ちゃんはそんな生半可な気持ちで…って事なんだろう。
ってこれだと私に好意持ってる前提での話じゃん。
そんな訳ないのに。
と、馬鹿な考えをした自分を殴りたくなった。
「俺ん中にゃまだアイツがいる。だからお前ェの気持ちには答えらんねーよ」
私が思ってたことを口にすればガシガシと頭をかくからその手を掴んでやった。
瞳孔の開いた目がこちらを捉えた。
『あのさぁ、私はミツバちゃんを好きなアンタが好きなの。それに言ったよね？
��死んでもアンタのこと好きだよ��って』
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作者名：翡翠 | 作成日時：2018年10月26日 11時
