7話 ページ7
『なんで…!!』
花垣くんの結婚式まで
あと2日になった朝
“昨夜未明､廃ボーリング場で…”
“2人の遺体が…”
“1名は都内で有名な犯罪組織の…､もう1名は…”
“花垣武道さん”
“二人は揉み合った形跡があり…”
“当時の映像から…花垣さんが…引き上げようと”
“力尽き…落ちていく二人の…”
『なんでっ』
視界が霞む
呼吸が浅くなる
私の大好きだった初恋の人と
そんな人が愛した大事な友達のことを思うと
幸せを願ってたのに
違う､こんな恩着せがましい言い回しじゃなくて
本当に大好きな二人だったから
『君は…いつだってヒーローなんだね…』
ショックが大き過ぎて
そのまま目を閉じ泣き続けた
携帯が引っ切り無しに鳴っている
仕事の電話か
花垣くんを知る共通の仲の誰かなのか
ヒナちゃん…敦君…松野…
この悲しみを
形容しきれない悔しさを
話したい､耳を傾けて同調したい
そうすれば､幾分か楽だろうに
あぁでも､そんな力も入らないから
嗚咽交じりに静かに力尽きて瞼を閉じる
ショックで遠のく意識は
意外なほどに冷静だった
あぁ､こんな現実なんて
いつぞや見ていた悪夢のように
覚めればちょっと気分悪くなるくらいの
そんな何ともなかった事になってないかな…
なんてね
ーーーーー
▼この後､果たしてどうなったんでしょうか
アッくんの長年の枯れない恋心とAちゃんの知りたがったてた一途な思いを理解し尽くした果てに､思いが重なり添い遂げたのでしょうか
アッくんとの生き違えた恋をキッパリと捨てて
いつもそこに居てくれる騒がしくも息がぴったりな千冬と新しい未来を見据えるのか
はたまた､武道と繋がる縁を切り離した生活をするために
関わり合いのないどこかの誰かと一緒になることを選び
自分を律した大人の理性で生涯を全うしたのか
この武道が変えようとした決死の未来の先は彼らのみ知ること
泣き虫のヒーローを失った彼女らの世界はこれからも続いていく
その傍で
似ているようで全く違う平和な世界線が
一層､賑やかな未来にむけて､始まろうとしている…
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作者名：graybear | 作成日時：2023年5月7日 22時
