盆祭り ページ10
随分と外が暗くなり薄く月が顔を出した。
ドン、ドン、と太鼓の音
ガヤ、ガヤ、と人が生み出す雑音
鼻腔を擽る料理の香り
今日は祭り当時、今年も盂蘭盆がやってきたのだ。
矢琶羽は1人、綺麗に飾り付けられた街中を歩いている。
舞台に背を向けながら、逆に舞台へと向かう人を掻き分けて歩いた。
時折人にぶつかる度に、矢琶羽は不満げな顔で着物を手でパッ、パッ、とはらう。
向かう場所は、今日祭りへ一緒に行こうと約束をしたAの家。
流石になにかおかしいと焦る気持ちを抑えながら。
しかし、その必要は無くなった。
「あれは……」
人混みで見覚えのある顔を見つけ、矢琶羽は駆られたように走り出す。
人混みを避け、なんとか人にぶつかりながらもその人物の元へとたどり着いた
「A…!」
「っ、…や、はば…ッ…」
Aはこちらに気づくなり、その大きな目を見開いて、瞳に涙を浮かべた。
それはそれは、とても驚いているような、悲しそうな顔だった。
今思えばこの時、この場所で、しっかりと気持ちを伝えておくべきだったのだと
後悔してもしきれない想いが、今になって、溢れた。
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作者名:aaa | 作成日時:2022年8月31日 10時