97話目 ページ7
眩しいな。
私の三雲くんの言葉を聞いた瞬間、思ったことはそれだった。
ボーダーに見捨てられないようにはどうすればいいかを考えて過去に囚われ続けた私にとって、三雲くんはボーダーにどう思われようが世間にどう思われようが関係なく自分の意志をしっかり貫いていて、それが、すごく。
『......めずらしいね』
「何が?」
出水がこっちを見る。
『ボーダーに染まりきってない人』
「あー......たしかにな」
記者が質問する。
《我々が訊きたいのはきみが原因で失われた32人の若者の人生をきみはどう埋め合わせるのか。きみがどう責任をとるかということだよ》
《取り返します》
『......え』
《近界民に攫われたみなさんの家族も、友人も、取り返しに行きます。“責任”とか言われるまでもない。当たり前のことです》
「......言っちまったな」
太刀川さんがそう呟く。
『記者も遠征の存在を知っちゃったってこと、だよね?』
「さすがに頭おかしいこいつらでも気づくだろ」
『頭おかしいって言っちゃっていいの?』
「三雲を責め立てるんなら自分で戦って腹刺されてしてみろよって話だろ」
『ちょ、太刀川さん言い過ぎ』
「まあ気持ちはわかりますけどね、おれらがあいつら守るために戦ってたと思うと余計に」
『まあね、』
やっぱり、三門市自体がもう歪み始めているのだと思う。
そして、だいたいの正隊員が、この歪んだ組織、そして町のことをもうなにも思っていない。
三雲くんのお母さんが言ったように、中学生、高校生が戦争に参加しているということが、本当はおかしいのだ。
私自身ももう、なんの違和感も感じなくなっていてむしろこのボーダーという組織がなくなったら__私に残るものはないのかもしれない、と思ってしまう。
そうやって、違和感が無くなっていく。
でも、三雲くんはそんな歪んだ組織にいながらも、自分の意志を貫いている。
三門市を守るために戦ったのに組織の身代わりにされて、それでも自分が守りたいものがあるから、三雲くんはまだ辞めないだろう。
記者のざわめきはおさまらない。
すると、城戸さんが口を開いた。
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天(プロフ) - 何も言わずに旋空弧月さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです。ちょうど一話更新したのでもしよかったらぜひ!これからも低速ではありますが更新していきたいと思うのでよろしくお願いします! (2021年5月27日 22時) (レス) id: b90335b0cc (このIDを非表示/違反報告)
何も言わずに旋空弧月 - ストーリーに惹き込まれ一気読みしました。大好きです。作者様の都合もあると思うので気長に更新を待ってようと思います。 (2021年5月27日 20時) (レス) id: 43784786f9 (このIDを非表示/違反報告)
Yu-grena(プロフ) - 天さん» いえいえ!作者様にも事情がありますし、こうしてまた更新します!と言う言葉を見て、帰ってきたー!と嬉しかったです!はい!こちらこそ、これからも宜しくお願い致します! (2021年4月11日 12時) (レス) id: 5ec0d29db1 (このIDを非表示/違反報告)
天(プロフ) - Yu-grenaさん» コメントありがとうございます!本当ですか……長い間更新が止まっていて申し訳ないです……すごくうれしいです!これからもよければよろしくお願いします!! (2021年4月11日 6時) (レス) id: b90335b0cc (このIDを非表示/違反報告)
Yu-grena(プロフ) - 初コメ失礼します!天様のワートリ小説(三輪くん)のお話、一から読んでて…大好きです!これからも無理せず、お体に気をつけて頑張ってください!応援してます! (2021年4月11日 0時) (レス) id: 5ec0d29db1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天(元れたす。) x他1人 | 作成日時:2020年1月2日 14時