118話目 ページ29
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ある日。
その日はごくごく普通の日だった。
眠いけど起きて、玉狛から学校までのんびり歩いて、やる気ないけど授業を受けて、レイジさんと合流して、玉狛に戻った。
みんな、その時は大切な仲間を沢山亡くしたばかりで、もちろん、おれも引きずってた。
でも、これからは前を向いてがんばろうって時。
少しだけそれぞれ大人の考えがズレ始め、少しギスギスしていたけど、今のところはまだ共に戦っていた。
いつも通り玉狛に入って、ただいま、と言った瞬間だった。
レイジさんがバックを置いたのを横目で見た時、レイジさんは消え、目の前にいつもとは確実に違う景色が広がった。
すぐに理解する。ああ、副作用だ、と。
ザアッと雨の音がして、恐ろしい未来が映像として流れる。
倒壊して元の姿を全く連想させない、でも確かに人
が住んでいた住宅。
汚れた体で飼い主を探している犬。
血を流して倒れている、人。
家を壊し、人を追いかけ回してるたくさんの近界民。
必死で戦っている仲間。
「……っ!」
「迅!」
レイジさんはしゃがみ込んだおれに駆け寄ってくる。
「どうした、なにが視える」
もう、なにか視えたってことは言わなくても分かったらしい。
「来る」
「まさか……」
「……っうん、侵攻だ。それも、かなり大規模な」
「……林藤さん!」
直ぐに林藤さんが階段から降りてくる。
「どうした、レイジ」
「迅が、未来が視えた、と」
「……迅、なにが視えた?」
「近界から敵が来る」
林藤さんは少し焦った表情をする。
「早いな、被害はどうだ?」
「たぶん、どんなにがんばっても……1000人は死ぬ」
「……1000…!!」
ふら、と立ち上がり軽く深呼吸をする。
「林藤さん、とりあえず全員集めて」
全員の未来を視る。
先程の動揺を押し込んで、冷静なふりをし、そう呟く。
せめて仲間だけは絶対に死なせないとあの時決めたんだ、とおれは強く拳を握った。
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天(プロフ) - 何も言わずに旋空弧月さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです。ちょうど一話更新したのでもしよかったらぜひ!これからも低速ではありますが更新していきたいと思うのでよろしくお願いします! (2021年5月27日 22時) (レス) id: b90335b0cc (このIDを非表示/違反報告)
何も言わずに旋空弧月 - ストーリーに惹き込まれ一気読みしました。大好きです。作者様の都合もあると思うので気長に更新を待ってようと思います。 (2021年5月27日 20時) (レス) id: 43784786f9 (このIDを非表示/違反報告)
Yu-grena(プロフ) - 天さん» いえいえ!作者様にも事情がありますし、こうしてまた更新します!と言う言葉を見て、帰ってきたー!と嬉しかったです!はい!こちらこそ、これからも宜しくお願い致します! (2021年4月11日 12時) (レス) id: 5ec0d29db1 (このIDを非表示/違反報告)
天(プロフ) - Yu-grenaさん» コメントありがとうございます!本当ですか……長い間更新が止まっていて申し訳ないです……すごくうれしいです!これからもよければよろしくお願いします!! (2021年4月11日 6時) (レス) id: b90335b0cc (このIDを非表示/違反報告)
Yu-grena(プロフ) - 初コメ失礼します!天様のワートリ小説(三輪くん)のお話、一から読んでて…大好きです!これからも無理せず、お体に気をつけて頑張ってください!応援してます! (2021年4月11日 0時) (レス) id: 5ec0d29db1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天(元れたす。) x他1人 | 作成日時:2020年1月2日 14時