6話 器用なメイド、不器用な内政官〜買い出しデート(仮)1〜 ページ7
次の日。
「オットー、さすがにもう、準備できた?」
ドアの向こうから、笑いを堪えるように問いかけてくるのは、外出用のメイド服に身を包んだAだ。
慣れないよそ行きの服に、かなり手こずっているオットー。
着替え始めてから、実に1時間が経過している。
女性であるAの支度が、20分で済んだと言えば、オットーの不器用さがよく分かるだろう。
「あー……、あと10分!あと10分だけ待ってください!」
「さっきからずっと同じこと言ってる。もういい。私が手伝うから」
「あ、ちょっ、」
ガチャ、とドアが開く音。そして、
「……ここまで酷いとは、聞いてない」
「うっ」
床に散乱しているワックスやヘアブラシ、そして、Aが一生懸命選んだスーツ。
目を少し部屋の端にやると、ちらっと下着なんかも……。
「もう、いつも緑のダサいのは、ちゃんと着れてるのに」
下着に反応してしまったのだろう。Aの頬に、わずかに朱が差している。
「僕、結構あれお気に入りだったんですけどねえ!?酷いな!?」
「いいよ、私がやる。オットーは着方と髪のセットの仕方、見て覚えて」
「ありがとうございます……。てか、買い出し行くのにこんなにおしゃれする必要、全く無い気がするんですが……」
オットーが少し困ったように言う。
「オットーはこれでも、うちの陣営の内政官。村の人に舐められたら大変。最初ぐらい、きちっとしないと」
「これでもってなんですかねえ!?まあ、格好に気合い入れるのは、言われてみれば、納得ですね」
うんうんと何度も頷くオットー。
それを横目に見ながら、Aは黙々と彼の身だしなみを整え、15分もかからないうちに仕上がってしまった。
さすがメイドなだけある。
「次からは、手伝わないからね」
Aはニッと歯を見せ、期待はするなと釘を刺す。
「はぁー、これを自力で、ねぇーー……」
「わ、わかった。慣れるまで、少しだけなら、ほんの少しなら、手伝ってあげるから」
苦肉の決断ぽく言っているが、デレが隠しきれていない。
「すみません、Aさん。……ぜひ、お願いします」
「大したことじゃ、ないよ。それよりほら、早く行こう。村を見て回る時間がなくなる」
「そうですね、行きましょう」
着替えの手伝いを、お互い過剰に意識してしまったのは、ここだけの秘密だ。
7話 この花の名は〜買い出しデート(仮)2〜→←5話 初めての約束
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あくる(プロフ) - そんな事を言って頂けて、感謝感激です! またちまちまと番外編を書こうと思っていますので、よろしくお願いします! (11月1日 18時) (レス) @page28 id: 64a42a1344 (このIDを非表示/違反報告)
作者くん!(プロフ) - 神ですね、この作品 (11月1日 17時) (レス) @page28 id: 36c939bd27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あくる | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/03240906ak1/
作成日時:2023年7月2日 1時