○○男子 (ページ2)

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ハスキーな声と、ふわりとした上品な香り。
私の隣のスペースに無理矢理腰掛ける人が誰かなんて、見なくたってわかる。

「先輩」

「あ、お疲れさまです」

形式的なあいさつをして急に縮こまるまわりの人たち。
我が社で毎月の売り上げ目標を達成し続けている数少ない人間の一人が、○○先輩。
みんな頭が上がらない彼によって、先ほどまでの空気感が一転する。

「だーめだよこの子は。俺のかわいい後輩なんで」

上着を脱ぎながら、さりげない感じで言う彼に、どこから聞いていたのかなんて今の私には聞く余裕もない。

「ね？そうでしょ？」

ちょうどやってきた烏龍茶を受け取って、ね？、ともう一度聞いてくる。

紺のスーツ。きっちりと締められたネクタイ。
袖から見える高級そうな腕時計。

改めて見てもやっぱりかっこよくて、こんな完璧な人が私なんて選ぶわけないってわかってるのに。

「はい…」

「ん、てことでか～んぱい」

なんとなくグラスに手をかけた私の手もとに瞬時に反応したように先輩のグラスが当たって、軽く音を立てる。

いつだって困っているときにやってきてくれて上手くその場を収めてくれる先輩は、私のヒーロー。

そんなヒーローに、私は恋焦がれている。