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彼女の手首を掴みながら駅前のタクシー乗り場を目指してグングンと歩く。あっ、と転びそうになった彼女を見て少し頭が冷え、先程よりもわずかに歩幅を合わせて歩いた。


「あのさぁ…」と言葉を発し始めると、歩きながら彼女がこちらを見上げた。




「もうちょっと、警戒しな?」
「え?」
「あの人、危なかったよ」




そう言ってちらりと彼女の方を向く。その時、今日初めてしっかりと彼女を見たことに気付く。
頬がほんのり赤く色付いて、薄く開けたつやんとした唇。ボーッとしているのか、いつもよりとろんとして、うるんでいる目。


これは……危なすぎる。



彼女を見てため息をつきつつ、掴んでいたのを手首から小さな手に変えた。


「何でよりによって俺がいない時に酔っ払っちゃうかな…」

「それは…別にいいじゃないですか…誰にも迷惑かけてないし」

俺からの好意に気付いているくせに。
自分の気持ちにも気付いているくせに。


「良くない。」


ピシャリと言い放つと「江口さんには関係ないじゃん。」と彼女はそっぽを向いてしまった。



「あのね……お持ち帰りされてたらどうするの」

「お持ち帰りされないもん」

「酔っ払ってたらいつお持ち帰りされてるか分からないでしょ」

「分かるもんそんな簡単にお持ち帰りなんてされないもん」



この酔っ払い。
もうため息しか出なくて逆に笑けてくる。



「男はみんな狼だから…気を付けてよ…」

「みんなって…みんながみんなそうじゃない。」

「みんなだよ。」

「じゃあ江口さんも?」

「そうだよ。」


いつも周りが優しくしてくれているからって、彼女はあまりにも隙を見せすぎだ。もっと警戒心を持てよ、と警鐘を鳴らしたつもりだった。




「うそつき。」




彼女の小さな声が、やけに鮮明に響いた。





……へぇ。

言ったな。





座って飲んでいたところに急に立ち上がって歩き始めたからか、彼女はかなりフラフラしてきた。倒れ込みそうになる彼女を支えてタクシーを待つ。目の前に停まったタクシーの中に入り、限界そうな彼女に「寝てていいよ。」と声をかけた。その言葉が合図かのように、彼女は肩にもたれかかってきてあっという間に夢の中に落ちてしまった。




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にくまん(プロフ) - eriiiさん» 楽しみにしてくださっててとても嬉しいです。しばらく彼視点を更新していきますのでごゆるりとお楽しみくださいませ。 (11月25日 13時) (レス) @page25 id: 07d191a8ef (このIDを非表示/違反報告)
eriii(プロフ) - この展開!!本編でめちゃくちゃ気になってました!彼視点楽しみです🥰 (11月24日 19時) (レス) @page23 id: 8d69bf7036 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:にくまん | 作成日時:2023年11月2日 20時

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