第89話 ページ41
キスした後、
裕太は一瞬微笑んだ気がした。
裕太の体は、みるみるうちに
光に包み込まれ始めた。
悪魔と化した姿は、光に染まっていく。
本来の白き翼を取り戻していく裕太は、
どこか尊くて、女神のような姿になる。
…俺は、この人と一緒になれば…。
掟を破ることになる。
…ごめんね、みんな…。
俺は、全世界の人を敵に回して、
一人を選ぶ。
…だけど、
それほどまでに愛してしまった。
…このまま、天使に戻って欲しい。
そして、二人きりで暮らしたい…。
…そう思ったのは、
単なる妄想にすぎず、
裕太は、一瞬で悪魔に戻ってしまった。
今度は、何も話さない。
宙に浮いたまま、何もしない。
話さない。
動かない。
ただ、俺を見ている。
裕「………誰か…。」
手を、俺に向かって差し出す。
裕「…僕に……。」
俺の肩に触れると、
俺の肩にとぷんっと裕太の手が入った。
裕「…温もりを……、幸せを……、
…愛を……。」
ずぶずぶ俺の体に裕太の手が飲み込まれていく。
目の前の光景に、頭が追い付かない。
裕「…1つになれば…。
…一生、離れないよね…。」
…このまま、一体化するのか?
ていうか、こんな事、俺は知らない。
裕「…好きだよ…?」
裕太に手を伸ばしたが、
俺の指先は、どろどろとした泥になって、
裕太に触れることが、出来なくなった。
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作者名:たんまもり姫 x他1人 | 作成日時:2015年10月27日 19時