肆拾壱頁─翠ト灰色─ ページ3
「あ、Aおかえり〜!ぐっすり休めた?」
扉を開けた私を出迎えたのは鈴奈の明るい声だった。
外はまだ太陽が眩しいものの、倉庫内は窓が少なく薄暗い。
明暗差に目がくらむ。
しかしそれも数秒と経たずに治り、鮮明になった視界に三人の姿が映った。
『......何があったの』
目に飛び込んできたのは、床に倒れる少年二人とその側であやとりをする少女。
私はそちらに歩みながら鈴奈の返答を待つ。
「いやぁ、あまりにも異能を使わない彼等が弱くてさぁ。さっき一回目が終わったとこ」
『なるほど』
彼等の身に何があったのかを察し、自然と手を合わせそうになる。
それから数分後、先に起き上がったのは中也だった。
「お、やっぱり君丈夫だね。もっと強めにいってもいいのかな」
『いや、それは流石に止めといたほうがいいと思うけど。やりすぎると首領に怒られるよ』
「うわぁそれは確かに嫌だ」
うぇ、と鈴奈が苦虫を噛み潰したような顔をする。
数ヶ月前にも同じ理由で怒られているため、その忠告は想像以上に効いたようだった。
「...ったく、まだ頭がくらくらしてやがる」
『お疲れさま。喋れてるなら充分だよ』
頭を押さえつつ躰を起こす中也に励ましの言葉をかける。
もう十日も経っているのだ。
恐らく彼女の与える振動は初日の倍以上になっているはずだ。
『鈴奈から見て二人はどう?』
「Aが興味を持つだけあって、この子達の成長速度が面白いくらいに早いね。楽しいよ、そのせいでついついやりすぎちゃうけど」
『それは何より』
彼女は飽きっぽいので私に頼まれ嫌々やっているのではと心配していたが、意外と乗り気で付き合ってくれているようで安心する。
太宰の方に目を向けると、倒れる背中の上でフルールがぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
異能の核には触れていないから善いものの、万が一そうなれば彼は二度と戻ってこられないため判っていても冷や冷やする。
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煉華(プロフ) - あきさん» あきさん、ありがとうございます!久しぶりすぎてどうかなと思ったのですが、アニメ放送開始したからか見てくださる人が多くて安心しました。頑張ります(^^*) (2023年1月27日 21時) (レス) id: 4710ee5a2a (このIDを非表示/違反報告)
あき - 続編おめでとうございます!ちょうど先週辺りから読み始めたのでタイミングが良かったです笑これからも頑張ってください。 (2023年1月26日 21時) (レス) id: 3fb64841ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:煉華 | 作成日時:2023年1月26日 20時